かむ動作が脳に与える影響
放射線医学総合研究所と神奈川歯科大学の共同研究グループはかむことで脳内ネットワークが活発になり注意力と判断速度が向上することを明らかにした。
(Wikiコモンズを利用)
物をかむ動作が認知機能の改善に関わることは徐々に明らかになってきたがそのメカニズムはまだ解明されていない。かむ運動が交感神経系を刺激する、あるいは気分や不安水準を変化させて応答性のレベルが上がるなど仮説はいくつもある。
研究グループは「かむ動作が注意の向上と認知課題の実行速度を増加する」現象について調べた。そこで、かむ動作が脳の活動部位に与える影響をfMRI(脳診断に活用するMRI装置より高磁場の装置)で画像化した。
スクリーンに映る矢印の左右を当てる検査で合図や妨害の有無を加えながら、かむ動作を伴う場合、伴わない場合で比較した。その結果、かむ動作が回答時間を短縮し、fMRIの画像から脳の注意に関わる領域の活動を増強させていることを確認した。つまり、かむ動作によって注意力が高まり判断速度は向上したと言える。
かむ機能を温存したい
かむ機能の重要性を示せたことで、かむ機能を温存させる治療を考えるきっかけになることを研究グループは期待している。例えば頭頸部のがん手術ではかむ機能を温存できないケースがあるが、その点で「切らずに治す」重粒子線治療などは温存させる治療法として有用ではないだろうか。
また、かむ動作が気分(mood)によい影響を与えるという研究報告があることから、今後は不安障害や、健康不安を抱えるがん患者のQOL向上に役立てる可能性を探っていく考えだ。
▼外部リンク
放射線医学総合研究所
http://www.nirs.go.jp/