日本脳炎ワクチン接種後に死亡
昨年報告された日本脳炎ワクチン接種後の死亡例がきっかけとなり、接種の必要性に疑問の声が高まっている。国は今後も接種を継続すると決定しているが、一方で予防接種による副反応への対策を強化する方針を打ち出している。
2009年6月から導入された乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン接種を受けた後に死亡した例が、昨年2件報告された。報告後に行われた「厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会日本脳炎に関する小委員会」では、死亡の原因として急性脳症を発症したことと、既往の心疾患を発症したことが発表された。
同委員会ではこれ以外にも、09年6月から12年9月までに同ワクチン接種した後に8人が脳炎や脳症を、11人が急性散在性脳脊髄炎を発症していたということが厚生労働省から報告された。
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日本脳炎ワクチン接種は必要なのか
かつて接種されていた日本脳炎ワクチンは、神経組織に副反応が起こる可能性があった。実際05年にはワクチンを接種した後に症例が報告され、健康被害救済制度の適用が認められている。そのため同年7月末以降は日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨は一時中止された。その後、09年に細胞培養日本脳炎ワクチン「ジェービックV」が開発され、10年度から接種が再び勧奨されるようになった。
今回、新たなワクチンを接種した後に複数の死亡例が出たということで、医師の間でも日本脳炎ワクチンの接種の必要性があるのかという声が増加している。
しかし同委員会では、今回の死亡した2例について1例はワクチンとの因果関係は不明であり、もう1例は予防接種と死亡との関連は極めて薄いと結論を出した。また国立感染症研究所は、ワクチンを接種しなかった場合の年間推定死亡者数は、全国で13人であると報告している。
予防接種部会では、予防接種後に重篤な副反応が生じた場合には医師が国に報告するということを義務化する「副反応の報告基準案」が承認されている。厚労省は今後、通常国会に予防接種法改正案の関連省令に報告義務についての内容を含めた改正案を提出する予定である。国会で可決・成立されれば報告基準を省令で定めるとしている。
▼外部リンク
日本脳炎に関する小委員会における審議結果について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/