JSOPPは約4年前、国際抗がん剤専門薬剤師学会(ISOPP)の日本支部として設立された。ISOPPは、がん領域の実務薬剤師が連携する組織として27年前に発足した国際的な組織。▽専門家間のコミュニケーションを容易にする▽腫瘍薬学実践の国際水準を設定する▽腫瘍薬学の教育を推進する――などを目指している。
JSOPPはこれまで、日本病院薬剤師会学術第3小委員会と連携し、がん診療支援拠点病院のネットワーク作りや、米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)アラートの翻訳、ISOPPスタンダードの翻訳活動を実施。調製時の抗がん剤漏出を防ぐ閉鎖式薬物混合システムについて、診療報酬における保険点数化に協力してきた。
これまでは主に抗がん剤による曝露防止をテーマに活動してきたが、今後は「幅広くがん治療の全てに関わるものを統括した学会にしたい」と中西氏は強調。日本医療薬学会のがん専門薬剤師や日本病院薬剤師会のがん薬物療法認定薬剤師など、がん領域の実務薬剤師が集まり、知識や経験を共有する場としてJSOPPを活用してもらいたいとした。
特別講演を行った谷川原祐介氏(慶應義塾大学医学部臨床薬剤学)は、JSOPPの位置づけについて「日本医療薬学会と対立するものではなく、日本医療薬学会を基幹学会とし、2階建ての2階部分として、がん領域の薬剤師が集まる学会として位置づければいいのではないか」と語った。
ただ、「学会を標榜するからには、学問的基盤は何かを考えていただきたい」と要請。米国の大学病院薬剤部には研究室はないが、病院薬剤師の業務に関連した臨床研究を行い、数多くの論文を発表しているとし、「医師の臨床研究や実験室でのラボ研究にあこがれるのではなく、自らの目線で臨床上の疑問を解決する学問的基盤を目指す必要がある」と求めた。
また、「米国では、医師と薬剤師の共同薬物治療管理(CDTM)が普及している」と紹介。特定の薬剤師に範囲を限定して処方権を与えるCDTMは、栄養管理、ワルファリン管理、支持療法、緩和薬物療法などルーチンの薬物療法に向いているとし、支持療法などの分野で「日本でもCDTMを目指す時期。がん専門薬剤師にはその先導役になってほしい」と呼びかけた。