ALSとSMAのタンパク質異常
理化学研究所などの研究グループが神経難病ALSとSMAに共通する病態メカニズムを発見した。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は全身の筋肉を支配する運動神経細胞に障害が起きて全身の筋肉が麻痺する運動神経変性疾患。50代から60代に多く発症、進行が早い難病だが原因不明で有効な治療法も見つからない。約90%が非遺伝性でRNA結合タンパク質のTDP-43が運動新駅細胞内に異常に擬集、蓄積する。一部のALSにRNA代謝を制御しているタンパク質、TDP-43やFUS遺伝子の変異が見られる。
脊髄性筋萎縮症(SMA)は脊髄の運動神経細胞の病変から全身の筋肉が麻痺する運動神経変性疾患。遺伝性の進行性神経難病で小児期から発症する。タンパク質SMNの減少が発症原因。SMNはスプライシング反応(DNAから転写されたmRNA前駆体から余分なRNAを落としてタンパク質合成の鋳型mRNAを作る機構)を担うタンパク質のsnRNPsとRNAの構造体の形成に欠かせない。つまりsnRNPsの減少が発症の要因と考えられる。
スプライシング反応の破綻
研究グループはTDP-43やFUSタンパク質の異常がRNA代謝とどう関わるかに着目し運動神経変性のメカニズム解明に挑んだ。TDP-43、FUS、SMNの局在を調べると、核内で共にGemという構造体にあり、互いに結合して複合体を形成していることがわかった。
さらに通常はGemに局在するTDP-43タンパク質が、変性した運動神経細胞では細胞質に凝集してGemを形成しないこと、snRNPsの量が上昇して凝集していることが明らかになった。snRNPsの減少がSMAを引き起こすとの知見を考え合わせると、運動神経細胞はsnRNPs異常に惰弱と考えられ、snRNPsの異常がスプライシング反応を破綻させ運動神経細胞の変性を招いていることが示唆される。
研究グループは今回の研究が運動神経変性疾患の発症メカニズムの全貌解明や治療法開発につながると期待している。
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