ストレスがけいれん発作を誘発
気仙沼市立病院と東北大学の共同グループは東日本大震災後にけいれん患者が増加したことを突き止め、ストレス環境がけいれん発作に関わる可能性を示した。自然災害後のストレス環境がけいれんの誘発に関わることはこれまでも指摘されているが、疫学的には論じられていない。同グループは震災後のストレスとけいれん発症の因果関係を調査するため気仙沼市立病院の神経救急入院患者の変化を検討した。
(画像はWikiコモンズを利用)
同病院には常勤の脳神経外科医が常勤し地域の神経救急医療の中核を担う。しかも震災で孤立した状態だったため、人口移動による偏りを排除することができた。
具体的には、地震発生の3月11日を基準にその前後8週の間に緊急加療が必要だった脳神経疾患全例を2008年から2011年まで精査、その結果、けいれん発作による緊急加療の頻度が2008年の11%、2009年の5%、2010年の0%に対して2011年には20%に増加した。
生命の危機に瀕するような大規模な自然災害を経験した後のストレス環境がけいれん発作を誘発する可能性があるとわかった。
脳疾患既往にストレスが誘因
震災後のけいれん患者(頭部外傷、脳卒中などの急性疾患を有さない)の85%に脳疾患の既往歴があったが、食事やトイレ動作などの日常生活の自立度は比較的高かった。一方、震災後の栄養不良状態を示唆する低たんぱく血症も見られ、これが間接的なストレス要因になったとも考えられる。
以上から、ストレスが必ずしもけいれんを誘発するわけではなく、脳疾患の既往がありストレスを感じることができる程度に自立度が高い場合にストレスは危険因子となり得ると言える。
研究グループは、ストレス環境下におけるけいれん発症の増加を疫学的に明らかにしたと同時に、その背景の病態について示された情報が今後のけいれん予防に寄与すると考えている。
▼外部リンク
東北大学プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/