乳がん患者の約20%は、HER2が陽性
中外製薬株式会社は、抗体薬物複合体トラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)(別称:T-DM1)の製造販売承認申請を行ったと発表した。
T-DM1は、HER2陽性転移・再発乳がんを対象として開発され、トラスツズマブ(ハーセプチン)にエムタンシンを結合し、HER2を標的とするように設計されている。
トラスツズマブでHER2シグナル伝達を阻害。エムタンシンをHER2陽性のがん細胞の内部に直接送達し、がん細胞を破壊する働きを持つ。
日本では、新規の乳がん患者は年々増加しており、乳がん患者の約20%は、HER2陽性と診断されている。また、2015から2019年の年間平均新規罹患患者数は約60,000人と推計されている。
(乳癌のX線画像(矢印) Wikiメディアより引用)
乳がん患者に早期に新たな選択肢が増える可能性
海外第Ⅲ相臨床試験(EMILIA試験)では、初期治療としてトラスツズマブおよびタキサン系薬剤を含む化学療法を受けた後に病勢進行が認められた、HER2陽性の切除不能な局所進行または転移性乳がん患者を対象に、「T-DM1単独療法」と「ラパチニブとカペシタビンの併用療法」について比較している。なお、この試験に日本からは参加をしていない。
EMILIA試験では、無増悪生存期間(PFS)については、T-DM1群では併用群に比べ病勢進行または死亡のリスクが35%減少。PFS中央値は、併用群の6.4カ月に対しT-DM1群では9.6カ月と、3.2カ月の延長となっている。
全生存期間(OS)についても、T-DM1群では併用群に比べ死亡のリスクが32%減少。OS中央値は、併用群の25.1カ月に対しT-DM1群では30.9カ月と、5.8カ月の延長となっている。
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