長期的な効用は認められない
国際医療研究センター糖尿病研究連携部は糖質制限食(低炭水化物食)について長期的な効用が認められず、むしろ死亡リスクが有意に増加するとした検証をプロスワンに発表した。
炭水化物の摂取量を減らす糖質制限食は生活習慣病の食事療法として人気が高い。短期的には減量や血糖コントロールの改善につながることが報告されているが、長期的な効果や安全性は不明である。
同研究センターは糖質制限食の死亡・心血管疾患リスクの系統的検証を行った。昨年9月までに糖質制限食について発表された海外の医学論文のうち、5年以上の経過を追跡し、死亡率を調査している9論文をメタ解析(複数の研究データを統合して統計的に解析)した。対象者27万2216人(女性66%)の追跡期間は5~26年間、総死亡数は1万5981人。総カロリーに占める糖質の割合をスコア化した結果、総死亡リスクが低糖質群では31%と有意に高かった。低糖質群と高糖質群を比較すると心血管による死亡リスクが低糖質群では10%上昇していた。糖質制限食による長期的な効用が認められないことがわかった。
食事療法は慎重に
解析した論文では対象が糖尿病ではないため、糖尿病患者に対する影響はわかっていない。医師に相談せずに糖質制限食を実践して血糖コントロールに影響を及ぼす例があることから、同センターでは薬物治療を受けている患者が効果的で安全な食事療法を長期に行うには、医師や管理栄養士の指導を定期的に受けてバランスの良い食事をとることが重要とする。
また、今回のメタ解析で長期的な低糖質摂取は全死亡リスクを有意に上げる可能性があり、安全性が疑われることになった。しかし、海外の研究に準拠したもので、食習慣の異なる日本人については改めて調査する必要を指摘している。
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