喫煙欲求に関わる前頭前野
理化学研究所分子イメージング科学研究センターとカナダ マギル大学モントリオール神経研究所の共同研究グループがタバコを吸いたいという欲求に関わる脳の部位を明らかにした。
喫煙欲求がタバコを連想する視覚刺激に誘発され、その欲求の強さはタバコが入手可能かなどの状況で変化することは知られていた。しかし状況依存性の喫煙欲求が前頭前野のどの部位で形成されているかは不明だった。
研究グループは視覚刺激で誘因された喫煙欲求が状況で変化したとき前頭前野の活動はどう関わるかを調べた。10人の喫煙者それぞれに4つのパターン(実験後すぐに喫煙できる状況と4時間禁煙する状況、機器による磁場で神経活動を抑制する状況と抑制したと見せかけて抑制しない状況)の実験を行った。これらの状況下で喫煙シーンによる視覚刺激があったときの脳の活性化部位を機能的MRI法(fMRI)で観察した。また被験者には喫煙欲求の強さを自己評価してもらった。
実験の結果、喫煙可能な状況の認識に基づいて喫煙欲求を促進するのは背外側前頭前野、そこで認知処理された情報が眼窩前頭皮質に送られて、喫煙欲求に対する活動が形成されていることがわかった。
薬物依存症の解明に可能性
薬物依存症は意思決定に関わる脳機能の異常が原因とされる。タバコに対する喫煙欲求ではニコチンの欠乏よりも喫煙行動に関わる自己意識(喫煙可能性の認識や禁煙治療意欲など)が影響することもこれまでの研究で示唆されている。
タバコなどの薬物に対する欲求が前頭前野の腹側と背側の脳神経の連携で形成されることが今回明らかになった。この連携のバランスが乱れると薬物依存症を引き起こす可能性がある。この2つの部位の連携強化が依存症をさらに解明し、有効な治療法につながることを研究チームは期待している。
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理化学研究所
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