出産後の復職の実態を調査
厚生労働省の調査では全国に医師は約29万5千人、そのうち女性は18.9%の約5万6千人(2010年)。20年後には4人に1人が女性になると予測される。一方で、医師不足で産休や育児休暇が取りにくいなど職場環境が整備されず妊娠、出産を機に退職するケースがある。この問題を放置していると医療崩壊の一因になると言われている。
ケアネットは昨年12月女性医師1000人を対象に出産後の復職に対する意識を調査した。全体的に悲観的なコメントが多数で、女性医師が制度の利用、周囲の反応、仕事と家庭生活の両立、キャリア形成の壁などの問題を抱えていることが浮き彫りになった。
産後の働き方の理想と現実
出産を考えている女性医師の約7割が「短時間あるいは非常勤で復帰したい」と望む。実際に出産した医師は「同じ施設にフルタイム勤務」が37.7%。『別の施設でのフルタイム勤務』8.4%を併せると約半数がフルタイムで復帰している。50代以上では「育休がなかった」「妊娠中、授乳中も当直した」の体験も。若い年代ほど「時短・非常勤」を選択した例が増えるが、30~40代でも「フルタイムで復帰か退職かを迫られた」「上司の理解がなく制度を使えなかった」と回答している。
産後の生活の不安材料で経験者の48.9%が「子どもを預ける施設」を挙げた。保育所の確保の難しさに加えて、病院勤務であるのに病児保育探しに苦労する声が多かった。医師全体の勤務時間短縮が必要という意見もあった。
産後の復帰形態を左右する要因は「上司・同僚の理解」が多い。「制度があっても前例がないと言われる」「産後の当直免除を反対された」「子どものいない女性医師の視線が厳しい」など周囲の冷遇がある。同僚の負担が増えることが申し訳なくて退職を選んだ例も。子どものいる女性医師に限らず、医師全体の過重労働を改善すべきとの意見も挙がった。
フルタイム勤務の継続は家族(特に実母)の育児協力の有無に左右されるとの回答が多かった。実家が遠いなどで協力が得られない場合、時短・非常勤勤務を選ぶしかない医師が多数。夫も医師だと家事・育児への協力はさらに困難で、患者の急変など綱渡りの生活に疲弊する姿も散見された。
出産を望む医師の最大の不安点に「現場感覚の薄れ」「技術・知識の遅れ」がある。経験者は「自己研鑽に充てられる時間が大幅に減った」「病棟を担当できず知識・経験の不足から専門医取得ができない」と。専門をあきらめて転科したり産業医や公衆衛生関係などに転向したりとやむを得ずキャリアを転換しているケースもあった。
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