アスピリンを恒常的に用いている人では、加齢性の黄斑変性症(AMD)を発症しやすいのではないかという報告が発表されました。
網膜にある黄斑に障害が生じるこの病気は、欧米では失明原因のトップになることも多く、40歳以上の人の1%がこの病気を抱えているそうです。
日本でも50歳以上の人で100人に1人がかかっているといわれています。失明に至るほどではなくとも、視界の中心、見たいところのピントが合わないため、運転や読書など日常生活に支障が生じることもあります。
この調査では、43歳以上の男女5000人を対象に、20年間の追跡を行いリスクと考えられる原因としてアスピリン服薬に注目しました。5000人のうち期間中にAMDの診断を受けた人は、629人。そして、10年以上アスピリンを常用していた人では、AMD発症率が2倍近くなるというデータが報告されたのです。
この傾向は特に、滲出型といわれるタイプのAMDでより見られていました。滲出型は、異常な血管が網膜の周辺に出来、これが破れたり血液成分がしみ出したりすることで、網膜に障害がでます。
調査に携わってきたクレイン博士は、アスピリン服用は2倍のリスクとはいえ実数が少ないことや、5年間の服用ではAMD発症率には違いが見られないことなどを理由に挙げて、実際の危険性は低いと解釈しています。特にこの調査では、アスピリンの服薬状況が自己申告となっているため、精度を欠く可能性があるとも指摘されています。
しかしながら、アスピリンを服薬する目的が、心血管疾患の予防である点から、目に関する影響のみを取り立てて、服薬を議論することでは不十分と考えられており、今後さらなる調査を進めて因果関係を一つ一つ確認して行くことが望ましいとされています。
論文は、アメリカ医師協会の学術誌に掲載されました。
▼外部リンク
WebMD ; Macular Degeneration Health Center
http://www.webmd.com/eye-health/
Journal of the American Medical Association ; Long-term Use of Aspirin and Age-Related Macular Degeneration
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1486830