「東北薬科大学病院」としてスタートする東北厚生年金病院は、病床数466床、職員数685人を擁するほか、診療科目は消化器科、精神科、神経内科、循環器センターなど20科目を有し、救急告示病院、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院等の多様な医療機能を有する総合病院だ。
高柳氏は、「大学附属の教育関連病院とするためには、それなりの規模は必要。様々な診療科があるバランスの取れた病院が理想と考えた」と話す。買収に当たっては、宮城県、仙台市等の関連自治体、病院職員の賛同を得て進められたことから、「われわれに対する関連自治体の信頼が大きかったため、円滑に譲り受けることができた」と満足感を示す。
来年4月1日から、全国初の薬科大学附属病院として真価が問われることになるが、「まず最初の1〜2年は、様子を見ながら少しずつ変化させ、病院スタッフと協議しながら、薬学教育にふさわしい病院にしていきたい」と方向性を語る。
一つは、実務実習のモデルとなる教育病院だ。「現在、各大学が依頼している病院実習には、施設間格差と実習の質の不均一性が厳然として存在している。これを何とか改善していくのが大きな課題だと思う。そのための教育モデルとなるような病院にしていかなければいけない」とする。
実務家教員のスキル維持も、附属病院の大きな意義と強調する。6年制教育がスタートし、実務家教員の採用が本格化したが、ほとんどの大学に医療現場が存在しなかったため、事実上、実務家教員は教育のみに関わる形になっていた。
「日々の臨床現場にいないと、なかなか最新の医療技術についていけない」「附属病院を持つことで、実務家教員が最新の医療技術を身につけ、臨床的な研究課題を見つけて研究する。その知識を学生に還元してもらう形に持っていきたい」と構想を披露し、実務家教員の資質向上に意欲を示した。
また、「大学院の教育・研究の拠点病院としたい」とも述べ、附属病院を活用した新しい大学院教育を進めていく方針を語った。薬剤師免許を持った大学院生が病棟で研修しながら、臨床的な課題を見つけて研究する一方、臨床研修を受けた後、基礎系分野を専攻していく方向性もあり、「臨床系と基礎系をうまく共存させながら、大学院の教育を発展させていくことが重要」と話す。