ラパマイシンで社会性相互交流障害が改善
東京大学大学院医学系研究科の水口雅教授らは、東京都医学総合研究所の池田和隆参事研究員ら、順天堂大学の樋野興夫教授らとの共同研究で、ラパマイシン(mTOR阻害薬)が自閉症の主症状の社会性相互交流障害を改善することをマウス実験で明らかにした。
研究では結節性硬化症モデルマウスに社会的相互作用試験を行い自閉症の主な症状(社会的相互交流障害)があることを確認した。脳内にはmTOR系の遺伝子発現や蛋白リン酸化に異常がみられた。これにラパマイシンを投与した結果、他のマウスと差のない正常な行動になった。
実証された点は2つ。自閉症様症状がmTORを介した細胞内情報伝達系の機能障害によるということ、mTOR阻害薬の投与でこれが改善するということ。ラパマイシンはmTOR阻害薬の一種で、抗腫瘍薬、免疫抑制薬として海外では認可されている。
自閉症に新たな薬物治療
自閉症は社会的相互交流障害、コミュニケーション障害、反復的・常同的行動を主症状とする。有病率は人口の1%以上とされる。しかし薬物治療は表面的な対症療法で社会適応の困難を克服する効果は乏しい。
結節性硬化症は自閉症を高率に合併するとともに、自閉症の基礎疾患の中では最も頻度が高い。
今後、mTOR阻害薬が自閉症の病態を改善する本質的な治療法として応用されることが期待される。同薬は結節性硬化症に合併する腫瘍の治療薬として日本でも認可される見込みがある。今回の研究は19日に英国科学誌「Nature Communications」電子版に掲載されている。
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東京大学プレスリリース
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