食道がんの術後、細胞シートを移植
長崎大学が東京女子医科大学と協力して、早期食道がんの内視鏡切除後に細胞シートを移植する臨床研究を行う。
(この写真はイメージです)
食道がんは消化管臓器のなかでも再発しやすく治療が困難、しかも手術の難易度が高い。がんが粘膜内に限局する早期食道がんの場合、内視鏡的粘膜切除術が一般的だった。近年は、広範囲の切除が可能な内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が普及している。ただし、術後に大きな潰瘍が生じて狭窄を引き起こす点が問題だった。
そこで、女子医大では自己の口腔粘膜から採取した組織片で口腔粘膜上皮細胞シートを作製する治療法を開発。ESD後に生着に優れるシートを移植することで問題は解消した。
今回、女子医大が長崎大にこの治療法を導入することになった。長崎大で採取した患者の血液と口腔粘膜を採取し空輸、女子医大で細胞シートを作製後、再び空輸。長崎大で患者の口腔粘膜上皮に細胞シートを移植する。輸送上の安全性を確認しながら、あわせて10例を試験する予定。
細胞シート工学について
細胞シートの作製には、温度応答性ポリマーを、培養する細胞の表面に固定化する技術(細胞シート工学)が使われている。このポリマーは32℃以上で疎水性、それ以下で親水性となるので、培養時に細胞の表面は接着可能な疎水表面を保ち、培養後に室温を下げれば、酵素処理なしで細胞を回収できる。細胞の機能を損なうことなく、シートが生体組織に速やかに生着する。
どの部位でも細胞シートの作製は可能で、積層化して厚みのある組織、臓器も作製できる。今後、新しい再生医療としてさまざまな臓器に展開するものと考えられる。
▼外部リンク
長崎大学
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/
東京女子医科大学
http://www.twmu.ac.jp/
http://www.twmu.ac.jp/