ヒトから採取した細胞や組織を加工して移植する「再生医療」による治療の安全性を確認するための新たな法整備を厚生労働省が検討していることが分かった。
現在、再生医療にかかわる臨床研究については、実施する研究機関が、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に基づいて厚労省の審査を受け、効果や安全性などを検証する仕組みがある。
しかし、ヒトの細胞や組織を用いた治療については、民間のクリニックなどで、こうした手続きを経ず、安全性・有効性が立証されていない治療を再生医療の名目で実施されるケースが散見。トラブルに発展することを懸念する声が上がっており、規制の必要性が指摘されていた。
厚労省が検討する法案では、研究機関や民間の医療機関がヒトの細胞や組織を用いた再生医療を行う場合、厚労大臣の承認を必要とするほか、培養施設の基準明確化なども盛り込む方向。来年の次期通常国会への提出を目指している。
京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞の受賞によって、ヒト幹細胞を使った臨床研究の広がりが期待される中、有効性・安全性が十分に認められない治療の規制につながることが期待される。
厚労省が14日の厚生科学審議会科学技術部会「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」に提示した論点メモでは、医療として提供される再生・細胞医療について、これまで有効な治療法のなかった疾患が治療できるようになるなど、患者の期待が高い一方、関係法令などが十分に整備されておらず、実用化に際して安全性の確保に問題があると指摘。安全性を確保しつつ、再生・細胞医療の実用化を推進していくには、「法整備も含めた実効性のある統一的なルールが必要」と明記した。