13日に都内で開かれた日本薬学会主催のレギュラトリーサイエンスフォーラムで、薬学部の医薬品RS教育に必要な教科書のあり方を議論し、豊島氏は、医薬品RSに精通した人材育成には、体系的な教育を行うことができる教科書が必要と強調した。
ただ、現行のモデル・コアカリキュラムで医薬品評価に関わるRSは、C17(医薬品の開発と生産)とC18(薬学と社会)の一部、卒業実習カリキュラムの一部など、RS教育がモデル・コアカリキュラムの中で分散し、各ユニットの到達目標(SBO)も医薬品RSを意識、判断できる表記となっていなかった。
そのため、医薬品RSは確立された学問領域として位置づけられておらず、教育内容の標準化が難しかった。教育担当者も実務家教員、薬事法規担当教員、基礎系教員、医師等の臨床系教員と分散しているため、専門性に乏しいのが現状。
また、改訂中のモデル・コアカリキュラムでは、全体の到達目標のスリム化が検討されているが、豊島氏は「医薬品RSに関わる到達目標の多くが削除される事態になれば、各大学でRS教育が行われなくなることが危惧される」と危機感を示した。その上で、大学におけるRS教育を推進していく必要性を強調。医薬品RSを科目として位置づけるための一般目標、到達目標の整備と教育担当者の育成を求めた。
一方、アステラス製薬の加山誠氏は、製薬企業が求めるRS教育について、「薬学部教育の中で多角的に考え、評価するプロセスを学び、RSの土台作りをしてほしい」と要望した。具体的には、▽医薬品開発の基本プロセスを理解すること▽産官学を交え、CTD、審査報告書等を題材に演習を行い、医薬品開発・審査承認プロセスに関して多角的な視点、考え方を学ぶこと――が重要とした。
医薬品医療機器総合機構の宇山佳明氏は、「審査員は様々なスキルを要求されている」と指摘。行政が求める薬学生にバランスの取れた人材を挙げ、特にコミュニケーション力、国際感覚、交渉解決力に関する教育を充実させていく必要性を訴えた。また「講義と演習では学生の姿勢が違う」として、ケーススタディ形式の演習や大学実習でのディベート、グループワークの実施など、演習の必要性を強調した。
現在、各方面からの意見を踏まえ、豊島氏らを中心に、医薬品RSの体系的な教科書作りが進められており、来年にも完成する予定。体系的な教科書を作成し、学部教育へ導入し、医薬品RSを学問領域として確立させたい考え。