足の麻痺した犬が組織移植後、再び歩けるように
神経学を取り扱う専門誌、ブレインに掲載された研究結果によると、犬の鼻から採取した細胞で後ろ足の神経麻痺の治療に成功した。
(写真はイメージです)
半年で成果が出た犬も
研究はイギリスのケンブリッジ大学で行われた。後ろ足の神経が麻痺した犬は34匹集められ、調査では二重盲検法(効果の有無を心理的影響を受けずに調べる為に、問題の治療や薬などを誰が受けているのかを被験者にも研究者にも知らせないで行う方法)が採用された。
研究者達は犬の鼻から臭覚の細胞の一部を採取し、3-5倍ほどに培養した後犬の背骨に注入した。
治療の前後に、犬をランニングマシーンの上で走らせ成果を比較したところ、研究に加わった犬の1匹であるジャスパーには目覚しい変化が現れた。骨髄注射の前ではランニングマシーンの上を前足だけで歩き、後ろ足はハーネスからだらんと垂れていたのが、治療後3ヶ月目ハーネスで支えられながらも4足歩行がかのうとなり、治療から6ヵ月後には、たまによろけながらもハーネスなしで歩けるようになった。
決定的な要因は追求出来ず
研究者達は彼らの治療がどうして成功したのかよく判らないことを認めた。ただ、鼻の組織の何らかの作用が働いて、犬たちがまるで脊椎に損傷がないかのように歩かせているのではないか、とクライグ・H・ニールセン基金の研究副主任、ナオミ・クライトマン氏は分析している。
臭覚に関する細胞組織には、小さい信号を脳に送ることによって、中央と末端神経組識の連絡を司る特別な役割があると考えられている。しかも中央の神経の細胞組織と違い、再建可能であることが知られている。
人への転換にはまだ遠く
アメリカ疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention・CDC)によると、現在アメリカにいる人で約20万人脊髄を損傷している。その数は毎年1万2千人から2万人の単位で毎年脊髄損傷を訴える人が増加している。
ロビン・フランクリン氏は犬の鼻の細胞組織が損傷した脊髄を修復し前後の足の協調性を取り戻したのはこの研究が初めてだと述べた。だた、人の脊髄修復への研究へはまだほど遠いとロンドン大学の神経学の主任で研究者のジェオフリー・レイズマン氏は分析する。
▼外部リンク
ブレイン誌 サイト
http://brain.oxfordjournals.org