
今回の譲受を受け、同大学は、現在の東北厚生年金病院の経営方針を引き継ぐ方針。附属病院化が地域医療への貢献を目的としていることから、中長期的には医療機能や診療科目の充実、強化を図っていく考えだ。来年4月の附属病院スタートに向け、原則として人員削減等の合理化策は実施しない。また、病院の老朽化や東日本大震災の教訓を踏まえ、10年後をメドに建て替えに着手し、災害時に機能が発揮できる強い病院を作る。
今後は、附属病院を学部臨床教育、大学院教育・研究、チーム医療教育、実務家教員の能力向上などの観点で積極的に活用する。特に臨床教育の中心となる実務実習を強化し、6年制薬学教育の充実を図ることを大きな狙いとしている。高柳氏は「外部病院での実務実習では、医師など病院スタッフが薬学教育に積極参加する体制を作ることは難しい」と指摘。附属病院化により、薬学教育と関連づけた効果的な実務実習を行い、モデル病院の構築を目指す考えを明らかにした。
また、4年制大学院博士課程での臨床薬学研修、分子生体膜研究所との共同研究拠点と位置づけるほか、臨床教育を担う実務家教員のスキルアップの場としても活用する。これにより、薬学教育を理解した医師と医療スタッフが、実務実習やチーム医療教育などの学部臨床教育、大学院教育に関与することが可能となるほか、実務家教員も附属病院の中で日々の医療に携わり、臨床技術の向上や教育研究能力を高めることが可能となる。
研究面でも、附属病院に共同研究拠点を作ることにより、臨床応用が可能な薬学研究を遂行していく方向だ。高柳氏は、「附属病院を持つことで、学部、大学院、研究所の様々な展開が可能になる」とメリットを強調。「緒に就いたばかりの6年制教育だが、医学部に近い本格的な実務実習ができるように附属病院を活用し、より良い薬剤師教育のモデルとなる病院に育てていきたい」と語った。
一方、同大学への譲渡を決めた東北厚生年金病院の田林晄一院長は、「団塊世代が後期高齢者になる2025年問題への対応を考えた医療体制を構築するためには、多くの医療関係者がスキルミックスしたチーム医療の充実が重要」と背景を説明した。
その上で、「薬科大学と一緒にチーム医療を発展させることで、地域医療を充実させることができる。病院の生産性も向上でき、災害に強い自立した病院の構築につながっていく」と述べ、薬科大学附属病院は新時代に向けたパラダイムシフトとの認識を示した。
写真:記者会見する高柳学長(右)