■次期改定に向け方針強調
日本薬剤師会の三浦洋嗣副会長は2日、つくば市内で開かれた茨城県薬剤師会学術大会で講演し、2012年度調剤報酬改定で薬学的管理指導の充実が図られたことに言及し、「多くの国民が医薬分業を経験している中、われわれの仕事を患者さんに理解してもらう努力がまだ足りないのではないか」と問題提起した。その上で、「わざわざ院外薬局で薬をもらう必要があるのかという素朴な疑問に対し、どれだけ薬剤師が国民の安全・安心に寄与しているか、しっかりと説明し、その姿を見せていかなければならない」と強調。“調剤一人勝ち論”がくすぶる中、次期調剤報酬改定に向け国民への説明を強化していく考えを示した。
12年度調剤報酬改定では、薬学的管理指導の充実が図られ、薬剤服用歴管理指導料(41点)に、お薬手帳を通じた情報提供や残薬確認などを含めて包括的に評価する仕組みが導入された。
三浦氏は、「薬歴を書いて患者さんから情報を収集し、薬の説明をする。われわれにとって当たり前のことかもしれないが、そういう薬剤師の取り組みを、なかなか患者さんに理解してもらえていないのではないか」と指摘。「医薬分業率が60%を超え、ほとんどの国民が医療機関から処方箋をもらって、院外薬局で調剤を経験している。そういう時代に、患者さんや国民から薬剤師がどう見られているか、院内で薬をもらうのと、わざわざ薬局で薬をもらうのと何が違うのかという素朴な質問に対して、どう答えればいいのか」と問題提起した。
その上で、処方箋のチェックや薬歴、処方変更、相互作用や禁忌の確認、疑義照会から患者情報の収集をはじめ、薬剤師が日々行っている調剤の基本業務について、「われわれがこれだけの仕事をしているということを、きちんと知らせる必要がある。疑義照会という作業によって、どれだけ医療事故を防ぎ、安心・安全な薬物治療に寄与しているかについて、国民に見せていかなければならない」と強調。こうした取り組みが、次期調剤報酬改定につながっていくのではないかとした。
ただ、一方で、薬局の現場において適切な薬学的管理指導が行われていないとの指摘も根強い。それが分業バッシングや調剤一人勝ち論につながっていく可能性がくすぶっており、「実際に患者さんから、お薬手帳の説明がない、薬袋にシールだけ入っていたという指摘がある。そんなことは当たり前にやっていると言えるようになってもらいたい」と苦言を呈した。
また、10年度で疑義照会があった処方箋の割合が3・15%で、そのうち7割が処方変更になったとの日本薬剤師会の調査結果を示し、「処方変更した処方箋のうち、変更しなかったら健康被害が発生したと考えられたものが2割あった。これは医薬分業が進み、医薬品に対する安心・安全をきちんと薬剤師が国民に提供できているという意味だと思っている」との認識を示した。
その上で、「重要なのは、薬剤師一人ひとりが目の前の患者さんに何ができるかということ。そして、薬剤師に説明してもらって良かったという国民の声を、もっと増やす努力をしていただくよう協力をお願いしたい」と訴えた。