第33回日本臨床薬理学会学術総会が、11月29日から3日間、宜野湾市で開催された。「医療としての臨床薬理学―集団と個の薬物医療」のテーマのもと、適切な薬剤を選択し、適切に投与し、患者に改善の予後を提供するという、当初の臨床薬理学の目的に立ち返り、活発な議論が行われた。
11月30日の会長講演で植田真一郎氏(琉球大学大学院医学研究科)は、「遺伝子解析の手法が進歩し、ゲノム薬理学的な視点から治療を個別化・至適化する研究は進んでいるが、薬剤、治療法の妥当性は治験だけでは証明できず、製造販売後の様々な臨床研究が必要」と主張。
さらに、市販後に実施される3000例調査についても、「安全性や有効性を正確に評価するのは不可能。評価が遅れることで別のドラッグラグを生んでいる」との見方を示し、降圧・合併予防効果があるにもかかわらず、処方率が低いサイアザイド利尿薬などの例を示した。
その上で、現実診療の有効性、安全性を評価するため、「治験後の臨床研究をどうデザインするかが課題になる」と述べた。患者レポジトリを設計し、コホート研究で観察を行った後に、ランダム化比較試験を実施する手法を提案し、「しっかりとした観察研究を行うことで、将来の治験の基盤になる」との考えを述べた。一方、「治験や疫学研究の教科書はあっても、臨床研究を学ぶところがない」と人材育成の土壌がないことに懸念を示した。
また、バイオマーカー研究については、マーカーを使った早期臨床試験を行い、それを現実での薬物療法に活用できるよう、橋渡し研究を進める必要性を強調した。PGxを活用した用量設定や患者選択、リスク最小化に加え、薬理学的なサロゲートマーカーを用いた試験を実施するだけでなく、マーカーと医療アルゴリズムの相関関係を明らかにし、現実医療でもマーカーを使って投与量や薬剤選択を行うことで、患者予後を改善できるとした。
最後に「臨床薬理学を現実の診療に役立て、貢献できるようにしたい」と述べた。