薬事・食品衛生審議会指定薬物部会は28日、薬事法で規制する「指定薬物」と化学構造が類似していれば一括して規制対象とする「包括指定」を導入することを了承した。パブリックコメントを経て、早ければ来年1月中旬に省令を公布し、来年2月に施行する。
厚生労働省によると、包括指定の対象となったのは、指定薬物に多く見られる合成カンナビノイド系の「ナフトイルインドール」を基本骨格とした物質群。基本骨格に分子が結合する場所を3カ所特定し、それぞれの順列組み合わせを算出すると、775種類が規制の対象となるという。このうち、既に1種類が麻薬に指定されているため、実質的には774種類の指定となる見通し。
厚労省は、合成カンナビノイド系の物質群を包括指定とした理由として、違法ドラッグとしての流通量が多いことや、製造しやすい構造となっていることなどを挙げ、「そうしたところを狙って指定した」と説明した。
現在、薬事法に基づく指定薬物は90種類にとどまっており、規制が大幅に強化されることになる。部会長の望月正隆氏(東京理科大学教授)は、「指定範囲にはこれまでに流通などが確認されていない物質が多く含まれている。今回の包括指定により、こうした物質の流通を未然に防止する効果が期待できる」と語った。
今回、導入を決めた包括指定の物質群は1グループだが、厚労省は「今後、他の薬物の基本骨格についても包括指定の対象にするかどうか検討したい」としている。
指定薬物をめぐっては、新たな成分を指定しても化学構造の一部をわずかに変えた成分がすぐに流通する“イタチごっこ”の状況が続いており、厚労省は化学構造が類似する成分を網羅的に規制する「包括指定」の導入に向けた検討を進めていた。