■病棟薬剤業務実施加算で
日本病院薬剤師会の北田光一会長は、本紙のインタビューに応じ、次期診療報酬改定に向け調査・検証が行われる「病棟薬剤業務実施加算」について、「本来、病棟で薬物療法の全責任を負うためには、要件の週20時間が重要ではない。常時、薬剤師が病棟にいることが大切であり、少なくとも昼間は病棟に常駐している形を早急に目指していきたい」との考えを示した。その上で、「本当にいい風が吹いている。人を増やすのは大変だと思うが、まだ今回の加算はステップに過ぎない。今は次のジャンプに向けた頑張り時だ」と強調。病棟業務の評価獲得へ発破をかけた。
病棟薬剤業務実施加算の算定状況を見ると、6月時点で503施設、直近で941施設が算定を申請したとのデータが得られている。北田氏は「一般病院が大半で、非常に算定施設が多いという印象だ」と実感を語る。6月時点の503施設にアンケートを実施したところ、人員増によって加算を算定している施設は3割にとどまることが明らかになった。7割の施設は、業務見直しなどで対応していたという。
北田氏は12年度改定時に、次期改定に向け「業務実施加算」の実態調査・検証を行うと明記された付帯意見を重視し、「増員して体制を整えた上で算定していれば問題ないと思うが、現有人員で無理に算定し、結果として評価に影響を及ぼすことが心配」と懸念を示す。
ただ一方で、3割の施設で増員を実現したことに対し、「少なくとも病院として、それなりの体制を整えていこうという姿勢を示している医療機関と捉えれば、3割が増員したという結果は良かったと思う」と前向きに評価。「できれば、まず1病棟でも常駐体制を整え、病院内で評価が得られてから、算定の取得につなげてほしい」と話した。
そのため、日病薬としても今後、病棟業務の質や知識・技術向上に向け、研修制度の充実に注力していく方針だ。北田氏は「常に自分を磨き、専門性を鍛える努力をしてほしい。これから病棟で薬剤師の顔は見えるようになる。あとは、医療チームの一員として、信頼される存在になれるかどうかだ。そのための実力に磨きをかけることが必要」と、さらなる鍛錬を求めた。
次期診療報酬改定に向けては、「要件の週20時間を満たせば加算を取れるが、重要なのは、薬剤師が薬物療法に全責任を負うという立場を実践するために、常時病棟に薬剤師がいるという主旨を理解すること」と強調。
「われわれとしても、少なくとも昼間は病棟に常駐している形を早急に目指していきたい」と述べ、常駐体制の構築を急ぐ考えを示した。将来的には24時間常駐体制を目指す方針だ。
今回の病棟薬剤業務実施加算は、1988年の診療報酬改定で新設された入院調剤技術基本料により、薬剤管理指導業務がスタートして以来、24年ぶりの大きな節目となった。北田氏は、「88年の薬剤管理指導業務のスタートをホップだとすると、まだ今回の加算はステップに過ぎない。次のジャンプに向けて、いい風が吹いており、大変ではあるが頑張り時だ。その努力の結果によって、病棟薬剤業務実施加算の増点を要求していける状況になっていく」と訴えた。
その上で、病棟業務日誌の作成を積み重ねることによって、薬剤師の行うべき新たな業務が見えてくるとし、「病棟業務の新たな展開を全国の医療機関で発掘してもらい、それをわれわれが大きな流れにしていきたい」と語った。