■基礎・臨床薬学融合に意欲
日本薬学会は、2013年度役員候補として、柴崎正勝氏(微生物化学研究所所長)を次期会頭候補とすることを理事会で確認した。2度目となる会頭就任に向けて柴崎氏は、本紙の取材に「私の使命は、伝統的な基礎薬学と臨床薬学との融合を図りながら、薬学発展に尽くすこと。そのための信頼関係を構築したい」と述べ、新たな時代の薬学構築に意欲を示した。来年3月27日、横浜市で開かれる第133年会の総会で正式承認される予定。
柴崎氏は、東京大学大学院薬学系研究科長を務めた06年から同学会会頭を1期1年務め、10年には微生物化学研究所所長に就任した。また、99年に日本薬学会賞、03年に紫綬褒章、05年には日本学士院賞、08年にアメリカ化学賞を受賞。同年、イギリス化学会からセンテナリーメダルが授与されるなど、わが国の有機合成化学の第一人者である。
06年度に続き、会頭に再登板するに当たって、柴崎氏は「これまで基礎薬学と医療薬学とは反発し合ってきて、6年制がスタートしても融合点が見出せないまま、ここまで来たように思う。また、6年制推進者の中には、研究ができないと悲鳴を上げているとの声も聞く。私はこれまでの伝統的な基礎薬学と臨床薬学とが連携し、1プラス1が2ではなく、3になるような、わが国薬学の新展開を図っていく。そのため相互の信頼関係を構築することが使命」と強調。「前回の会頭の時は、どちらかといえば対立的だったのは事実。しかし、お互いに理解し合い、日本の薬学が適切な方向に進むよう努力していきたい」と、基礎と臨床との相互理解の深化に強い意欲を示した。
13年度執行部は、次期副会頭候補(任期2年)に太田茂(広島大学医歯薬保健学研究院教授)、鈴木洋史(東京大学病院薬剤部長)の両氏、年会組織委員長担当(任期1年)に大塚雅巳氏(熊本大学生命科学研究部教授)とする。
柴崎氏は「医療薬学との融合を図り、それぞれに発展し得るための重要な議論ができる副会頭候補として鈴木氏、一方で6年制教育・研究の推進に大きく寄与されている太田氏が選ばれたことを歓迎する」と述べ、基礎中心の従来型執行部体制の変革を歓迎した。
また同学会は、13年度の各種学会賞受賞者を決定した。薬学会賞には、九州大学・井上和秀、徳島大学・宍戸宏造、岡山大学・森山芳則の3氏を選んだほか、学術貢献賞3人、学術振興賞2人、奨励賞8人、教育賞・功労賞各1人の受賞を決定した。授賞式は、総会開催に合わせて行われる。なお、創薬科学賞は後日公表する。