肥満のメカニズム
理化学研究所脳科学総合研究センターは、肥満に関わる糖タンパク質「GPRC5B」の機能をマウスの実験で解明した。
脂肪の蓄積と消費のバランスの破綻が肥満の原因となり、さまざまな病気を招くことはよく知られている。なかでも糖尿病、高脂血症、高血圧症の発症リスクが高い。予防対策を講じるためにも、肥満のメカニズムを一刻も早く知る必要があった。
ヒトゲノムの解析が進むにつれて、SNP(一塩基多型)などの塩基配列と疾患の関係が徐々に突き止められてきた。そして、肥満には糖タンパク質GPRC5Bが関わっていることがはっきりした。エネルギー代謝を調節する仕組みを調べれば、肥満のメカニズムも明らかになる。しかし、そのメカニズムが複雑すぎたため、今日まで解明に至っていなかった。
肥満の発端となる酵素
研究チームは、GPRC5Bのタンパク質複合体を分離・精製して、結合する因子を調査した。その結果、チロシンリン酸化酵素(Fyn)を同定。これは細胞内外の情報伝達を行っている酵素だが、GPRC5Bと結合すると酵素活性が制御されることがわかった。
GPRC5B遺伝子欠損マウスと野生型マウスに高脂肪食を与えた。前者は血糖値が正常、脂肪組織の慢性炎症もなかったのに対し、後者は劇的な肥満を示し、2型糖尿病を発症した。マウスの実験は、食物の過剰摂取でエネルギーの消費・蓄積のバランスが崩れた場合、GPRC5BがFynの酵素活性を持続させて、脂肪細胞の慢性炎症を引き起こすというメカニズムを示している。
今回の成果が、肥満による2型糖尿病の治療法の開発につながると同研究所では期待している。
▼外部リンク
理化学研究所プレスリリース
http://www.riken.go.jp/