製造販売後の医薬品は、臨床現場で多数の患者に使用されるため、未知の重篤な副作用が発生したり、既知の副作用も重篤化することがある。ただ、これら医薬品の安全性を評価し、リスクを最小化するファーマコビジランスの活動が求められるものの、日本では学問的な歴史が浅く、アカデミアでの教育もほとんど行われていないため、薬剤疫学の専門的な人材不足が指摘されてきた。
また、薬害肝炎検証・検討委員会の最終提言を受け、来年4月に厚生労働省がスタートさせる「医薬品リスク管理計画」(RMP)の適切な実施と結果の評価も求められている。
そこで、同学会は、PVS認定制度を立ち上げ、専門家の裾野を広げることにより、安全性監視活動を実践できる人材育成に乗り出すことにした。
認定制度では、PVを「副作用またはその他の何らかの医薬品に関連する問題を発見、評価、理解、予防することに関連する科学と活動」と定義。認定要件を、[1]学会会員歴3年以上[2]学術実績として合計50単位以上(日本薬剤疫学会・国際薬剤疫学会における口演・ポスター発表、薬剤疫学関連の論文、薬剤疫学関連セミナーへの一定以上の参加等)[3]業務実績として、PVに関連した領域に関わったことを示す書類の提出――とした。
これら要件を全て満たした会員について、過渡的措置による認定を13~16年にかけて実施する。第1回の過渡的認定は、来年3月末まで申請を受け付け、来年9月に行う予定。その後、製薬企業の安全対策担当者、行政関係者に裾野を広げながら、4回にわたって過渡的認定を行い、16年以降は別の方法で認定を行う模様。また、認定資格は5年ごとに更新され、学会発表や論文発表等、5年間で30単位を取得する必要がある。
来年9月には、初めてのPVSが誕生するが、今後は医薬品の安全性薬理、毒性、臨床試験のデータから副作用リスクを推測することを中心に、実務面では副作用症例の評価と報告書の作成、薬剤疫学論文の批判的な吟味と利用、安全性監視計画案の立案・提案、適切な措置・対策の提案など、さらに教育面でも、大学や製薬企業のPV部門、行政の安全対策関連部門の新人等に対し、大学では薬剤疫学研究を、製薬企業・行政ではPV活動の実践指導が求められそうだ。