■作業部会が大筋了承
文部科学省は2日、iPS細胞研究の改訂版ロードマップ(工程表)を幹細胞・再生医学戦略作業部会に示し、大筋で了承された。iPS細胞研究の進捗を受け、工程表を大幅に見直したもので、疾患研究や創薬への応用に向けては、疾患特異的iPS細胞を活用することにより、5年以内に病態解明、10年以内に新薬等の臨床応用を実現するとした。
文科省は、2009年6月に「iPS細胞研究ロードマップ」を策定。ただ、その後の研究が大きく進展したことから、改めて工程表を見直し、新たなiPS細胞研究の実施スケジュールを示すことにした。
新工程表では、▽初期化メカニズムの解明、安全性の確立▽安全性の高い再生医療用iPS細胞の作製と供給(標準化)▽革新的な幹細胞操作技術による器官産生技術の確立▽疾患研究・創薬のための疾患特異的iPS細胞の作製・評価、バンク構築▽iPS細胞を用いた再生医療研究――の5項目の実施スケジュールを示している。
そのうち、疾患研究・創薬関連では、「進捗中」の取り組みとして、▽iPS細胞を作製すべき疾患の整理と作製▽各疾患の研究者へのiPS細胞に関する技術講習▽疾患特異的iPS細胞バンクの整備▽疾患特異的iPS細胞の研究者への配布▽創薬に利用できる毒性評価系の産業応用――を位置づけた。
「2年以内」に実施するスケジュールとしては、▽疾患特異的iPS細胞作製方法の確立とその最適化▽疾患特異的iPS細胞の評価方法の確立を掲げた。
また「5年以内」には、▽疾患特異的iPS細胞を用いた病態解明▽疾患特異的iPS細胞バンクの充実▽疾患特異的iPS細胞の立体培養により、高度な病態再現をするヒト立体組織を大脳、小脳、甲状腺等に関して作製できる技術の確立――を目指し、今後「5~10年」の間には、疾患特異的iPS細胞の活用による新薬等の臨床応用を実現するとした。
そのほか、iPS細胞を用いた再生医療のヒトへの臨床研究開始については、網膜色素上皮細胞で1~2年、心筋で3~5年、血小板で3~4年、赤血球で5年後以降、神経幹細胞で5年以内、角膜で5~7年、造血幹細胞で7~10年後、膵β細胞で7年後以降をメドに実現するとした。
この日、委員からは、疾患特異的iPS細胞バンクについて、「既にかなり整備されてきており、進捗中に入れてもいいのではないか」等の意見が出たほか、臨床研究の開始時期を示した「iPS細胞を用いた再生医療研究」の項目に「その他の組織」を設けた方がいいのではないかとの提案があったものの、部会では新工程表を大筋で了承した。