謎だったマイクロRNAの抑制メカニズム
東京大学分子細胞生物学研究所の泊幸秀准教授らの研究チームが遺伝子を制御するマイクロRNAに新しいしくみがあることを発見した。
マイクロRNAは微小なリボ核酸で、たんぱく質の合成を抑制する機能をもつ。つまり、分化・発生や細胞増殖への関与がわかるに従い、がんや重篤な疾患の治療法にマイクロRNAを用いる研究が進められてきた。
一方で、遺伝子を抑制するそのしくみは明らかではなかった。これまでマイクロRNAが機能を発揮するために必須の因子とされていたGW182、同チームはこれを不在の条件にした研究を行った。その結果、遺伝子発現の抑制には、少なくとも3つの経路が寄与することがわかった。複数のたんぱく質と複合体を形成しながら働いているマイクロRNAの作用原理が解明された。
医薬への応用に高まる期待
今年6月に、名古屋大学がマイクロRNAとアデノ随伴ウィルスベクターを使用した遺伝子治療を開発している。これは球脊髄性筋萎縮症などの神経変性疾患の治療をめざしたものだ。
東大研究チームは、マイクロRNAの原理を正確に理解することで、今後、医薬などへのさらなる応用に生かされていくと期待している。今回の研究の成果は、11月2日、米国の科学誌モレキュラー・セルの電子版に掲載された。
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