新たながん治療法確立に期待高まる
神戸大学大学院医学研究科の井垣達吏准教授らの研究で、良性の腫瘍が悪性となりがん化する原因は、細胞の内部で生命維持に必要なエネルギーの生産を行う「ミトコンドリア」の機能低下にあることが分かった。
(写真はイメージです)
良性の腫瘍とは、前がん細胞が増殖して作られるもの。ミトコンドリアの機能が低下すると、2種類のたんぱく質が分泌され、近くにある細胞のがん化を促進し、悪性腫瘍となる。
がんにかかったヒトの体内でミトコンドリアの機能低下が起こっていることは、10年以上も前から知られていたが、そのメカニズムが解明されたのは、今回が世界で初めてのことだ。
腫瘍のがん化とミトコンドリア
研究チームは、まずショウジョウバエの幼虫にRas(ラス)遺伝子を導入し、良性腫瘍を作った。
そしてその腫瘍に約3000種類の遺伝子変異を1つずつ導入し、経過を観察した。その中で、ミトコンドリアに機能障害を起こす遺伝子変異を導入したことで、良性腫瘍の近くにある細胞が増殖を始めることが分かったのだ。
そして、その近くの細胞で、Ras(ラス)遺伝子の活性が高まっている場合、細胞が悪性化し、別の組織への転移も見られた。ここで、ミトコンドリアの機能低下と腫瘍のがん化の関係が解明された。
この研究によって、新たながん治療の確立が期待されている。研究成果は9月30日付けのイギリス科学誌「ネイチャー(オンライン版)」に掲載された。
▼外部リンク
サイエンスポータル
http://scienceportal.jp/news/daily/1210/1210041.html