8月20日、東北大学大学院医学系研究科(眼科学分野、附属創生応用医学研究センター酸素医学コアセンター)の中澤徹教授らの研究グループは、マウスを使った実験により、糖尿病網膜症初期に生じる網膜神経節細胞(以下、RGC)死の進行に、酸化ストレスとカルパイン(細胞死が起こる際にタンパク質を切断する物質)が関与していることを解明すると共に、RGC死の進行を投薬によって遅らせることに関する研究成果を発表した。
糖尿病の代表的な合併症の一つである糖尿病網膜症は、主に眼底血管障害に関連すると考えられえているが、RGC障害にも関わっているとされている。
しかし、RGC障害のメカニズムや、その保護方法は確立されていないのが現状である。
今回の研究成果は、糖尿病網膜症の新しい病態理解になるとともに、投薬治療の可能性を示すものとして、国際学術誌「Neurobiology of Disease 」掲載される予定だ。
今回、糖尿病網膜症初期におけるRGC死に関連する要素として、酸化ストレスとカルパインに着目した同研究グループは、マウスを用いて2つの実験を行なった。
正常なマウスに加え、酸化ストレスに対する防御機構のスイッチとなる「Nrf2」と、カルパインを抑制するカルパスタチンを欠いたマウスをそれぞれ用意し、動物を糖尿病状態にする化合物であるストレプトゾトシンと高脂肪食を与え、RGC数の変化を2週間計測した。
結果は、Nrf2とカルパインを欠いたマウスは、通常のマウスに比べて生存RGC数が20%以上減少した。
この結果は、RGC死に酸化ストレスとカルパインが関与していることを示したものとなる。
また、糖尿病を模倣した環境下で培養した網膜細胞に、酸化ストレスやカルパイン活性を阻害する化合物である「SNJ-1945」を投与したところ、無添加の場合と比較してRGC数が向上することが認められた。
▼外部リンク
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