免疫細胞由来のたんぱく質
北海道大学の腫瘍免疫学准教授である地主将久氏の研究チームは30日、抗がん剤耐性を誘導する免疫細胞由来の新規分子を同定したと発表した。
研究チームは、人体の免疫機能を司っている樹状細胞が、がん細胞内で免疫機能を抑制するたんぱく質「TIM-3」を出すことで、抗がん剤耐性を誘導していることを突き止めた。
樹状細胞は通常ウイルスやがんを攻撃するリンパ球に指令を出し免疫活性するが、がん細胞の中にある樹状細胞では健康な組織の中にある樹状細胞よりも「TIM-3」を多量に作り出すことが解明され、この「TIM-3」が多い状態では、樹状細胞が攻撃するべきがん細胞のDNAを認識できず、免疫機能が低下、抗がん剤の効果を抑制するという。
抗がん剤の効果高める開発も
大腸がんのマウスを使った実験では、抗がん剤と「TIM-3」の働きを阻害する薬剤を同時に投与したところ、抗がん剤による大腸がん拒絶能が劇的に改善し、抗がん剤のみを投与したときよりも腫瘍の大きさが半分以下になった。
今後はさらに樹状細胞由来の「発癌促進因子」の特定を進め、免疫応答制御の分子メカニズムを明らかにすることで、その分子を標的とする新しい抗がん剤の開発が可能になると考えられている。
新しい抗がん剤が開発されれば、既存の抗がん剤の効果を飛躍的に高め、再発や転移などがんの進行を抑止する上でも大きな成果をあげることが期待される。
この研究成果は29日付の米科学誌ネイチャー・イムノロジー電子版に掲載された。
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ネイチャー・イムノロジー電子版
http://www.nature.com/ni/index.html