メルクの新規不眠症治療薬「SUVOREXANT (MK-4305) 」について期待が寄せられている。従来の睡眠薬に比べて、副作用が少なくなるためだ。
「SUVOREXANT」は、「オレキシン受容体拮抗薬」と呼ばれるタイプの不眠症治療薬で、最も臨床ステージが進んだ化合物。
オレキシンとは、覚醒を制御するペプチドであり、この受容体をブロックすことで覚醒状態が保てず、「生理的睡眠」が誘発される仕組み。
従来の不眠症治療薬の多くは、このオレキシンではなく、抑制性の神経伝達物質であるGABAの受容体に作用して、脳全体の活動を低下させる「鎮静型」。
しかし、このタイプは副作用が課題となっており、起床後も薬の作用が残ったり、運動障害や記憶障害、依存性やリバウンドなどが起きるというような症状が出る可能性がある。
現在、米国では約7000万人、日本でも約2000万人の成人が睡眠障害に悩んでいるという。
不眠は、ストレス社会や、携帯電話やパソコンの普及などの拡大にともない増え続けている、いわゆる「現代病」と言える。
それだけに、副作用の少ない新しい睡眠薬の登場は、多くの人たちの生活を改善することが予想され、期待が寄せられているのである。
しかし、同じく「オレキシン受容体拮抗薬」として注目を集めていた「アルモレキサント:Almorexant」は、英グラクソ・スミスクラインとアクテリオンが40億ドル以上を費やしたにもかかわらず、昨年1月に臨床開発中止を発表している。副作用の課題を解決できなかったことが原因だ。
「SUVOREXANT」は現在、3か月間の第3相試験の結果、プラセボに比べ入眠までの時間が短く睡眠持続時間も長いことや1年間の効果持続が証明されている。
同社は、年内に新薬の承認申請を行う意向を表明しており、承認を受け副作用の少ない睡眠薬が誕生すれば、睡眠薬業界で非常に大きな革命となるだけに、今後の動向には要注目である。
▼外部リンク
厚生労働省:平成20年患者調査(傷病分類編)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/suiihyo20.html