鉄分の補給が、鉄欠乏ではあるが貧血ではない女性の疲労を約50%減らしたという臨床結果が、7月9日、カナダ医師会ジャーナル(CMAJ)で発表された。重度の鉄不足は疲労感を引き起こすが、軽度の鉄不足の場合にも、鉄分のサプリメントが疲れに効果があることが明らかになった。
この研究は、無作為比較対照試験で198人の月経のある18~50歳の間の女性を対象に、12週間行われた。あるグループは、80mgの硫酸第一鉄のサプリメントを毎日、別のグループはプラセボを同様に摂取した。この実験は、参加者も医療従事者のいずれも、どのグループが鉄分のサプリメントを受け取ったかプラセボを摂取したかを知らない、二重盲検で行われた。
その結果、12週間鉄分を摂取することで、被験者の疲労が被験前の数値からほぼ半減したことがわかった。プラセボのグループが30%以下だったことを考えると、著しい結果がでたといえる。
疲労感のみならず、ヘモグロビン、フェリチンおよびほかの血中濃度においても、鉄添加をして6週間後には、早くもはっきりとよい影響がでていた。この発表は、スイス・ローザンヌ大の外来ケア及び地域医療部門のバーナード・ファヴラット博士らが行った。
鉄不足だが貧血ではなく月経がある女性で、かつ原因不明の疲れとフェリチンのレベルが50μg/Lより低い場合においては、鉄欠乏症を考慮する必要があるという。
疲労は、プライマリーケアにおいて一般的な症状だ。「鉄分欠乏は、おそらく出産適齢期の女性の疲労の原因として過小に認識されてきた」と博士は話す。女性は男性の3倍以上疲労を覚えるとの報告もあり、潜在的な患者の数は多いだろう。「疲労感」というなかなか病気として認識されづらい症状の改善方法がひとつ示されたことは、世の一般女性にとって朗報といえる。
鉄分の過剰摂取は胃腸障害を起こしたり、臓器への組織沈着から肝機能障害などを発症する可能性があることを理解したうえで、サプリメントを適切に利用したいものだ。
▼外部リンク
カナダ医師会ジャーナル
http://www.cmaj.ca/content/early/2012/07/09/cmaj.110950