東京大学の小山隆太助教・池谷裕二准教授らの研究チームが「側頭葉てんかん」の原因解明し、研究結果が米医学誌ネイチャーメディシンの2012年7月15日付けで電子版に掲載された。
最も患者数の多い精神疾患の一つと言われ、世界的にも成人の1%に生じると言われるてんかん(癇癪)。その70~80%は薬物療法によって発作をコントロールできるが、薬にあまり反応しない難治性てんかんの患者も少なくない。
難治性てんかんの割合は、初診時年齢が15歳以上の成人のてんかんでは25%、初診時年齢が15歳以下の小児てんかんでは13%という報告もあり、特に成人の難治性てんかんには「側頭葉てんかん」が多いとされている。
てんかん患者の3~4割は難治性と診断されており、研究チームは、この患者の多くが幼少期に熱性けいれんを経験していたことに着目し研究を行なった。
ラットの脳を使った実験では、熱性けいれんによって脳の神経細胞が興奮しやすい異常な回路を作っていることが判明し、この細胞がてんかんの発作を起こしていることが発見された。
実験ではラットの脳の一部を切り取って可視化し、てんかん発作を起こさせ正常なマウスと比較したところ、発作を起こした脳の神経細胞は、正常に発達せず、未熟なままの細胞は通常は神経伝達物質に対して興奮作用を起こすたんぱく質を過剰に持っていることが判明した。
このたんぱく質によって、てんかんの発作が起きやすくなり、この物質を抑える薬を与えたところ発作が予防できたことも確認されている。
今回はっきりと「側頭葉てんかん」の原因が熱性けいれんであると解明されたことで、今後の創薬や治療法の開発につながることが期待される。
▼外部リンク
東京大学 広報資料
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_240716_j.html
日本で処方可能な抗てんかん剤添付文書
http://www.packageinsert.jp/ranking/list/3459001