お酒を多量に嗜むことがない人の脂肪肝(非アルコール性の脂肪肝疾患(通称NAFLD))は近年、肝硬変や慢性肝炎、肝臓ガンなどの原因になることが明らかになり、欧米では大きな問題になっている。日本ではNAFLDは推定で1000万人の患者、それが悪化した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、全国で200万人に上る患者がいると言われているが、その原因は特定されていなかった。
今回、横浜市立大が大阪大学歯学部、順天堂大学医学部との共同研究によって、健康な人は肝炎を起こさない程度の微量の腸内細菌に太っている人の肝臓が過敏に反応することで肝炎を発症するメカニズムを解明したと発表した。この研究成果は、横浜市大の中島淳教授、同今城健人医師らの研究グループによるもの。
脂肪肝である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、お酒を飲まない人が、カロリーオーバーの食生活などで内臓脂肪が溜まり、そこから常に大量の脂肪が肝臓へと供給され「脂肪肝」へと変化すると考えられている。
今回の研究では「脂肪肝」からNASHが発症する原因として、肥満により脂肪組織から多量に分泌されるホルモンである「レプチン」によって、肝臓がごく微量の腸内細菌にも花粉症患者のように過剰反応を起こしていることが分かった。
以前から腸内細菌由来の内毒素が肝炎を起こすことはわかっていたが、今回の研究が初めて、肝臓そのものが過剰反応を起こすことを示した報告となった。
今後も患者数の増加が予想されることから、、診断方法の開発や、新規治療法の開発が進むことが期待されている。
この研究成果は医療上大きな意義があるとされ、今月発行の米科学専門誌「Cell Metabolism」の表紙を飾り、研究の詳しい内容が掲載された。
▼外部リンク
横浜市立大学の発表
附属病院 消化器内科 中島 淳教授らの研究グループが、肥満による脂肪肝炎発症のメカニズムを解明
http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/pr/press/120704_amedrc.html
NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)
http://www.hakuraidou.com/info/nash.html
Cell Metabolism
http://www.cell.com/cell-metabolism/