理化学研究所は、国立がん研究センターとの共同研究で、27例の肝臓がんの全ゲノムシーケンス解析を行い、肝臓がんの包括的ゲノム変異を解析したと発表しました。
共同研究グループは、5つの肝臓がんの専門医療機関と共同で、25人の患者から27例の肝臓がん(B型肝炎関連11例、C型肝炎関連14例、非ウイルス性2例)の検体を収集し、その腫瘍のDNAおよび血液からの正常DNAについて、全ゲノム(約30億塩基対)シーケンス解析を実施。
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピューターを駆使してデータ解析をしたところ、ゲノム変異の数は、1つの腫瘍あたり平均でポイント変異が約11,000カ所、ゲノム構造異常が21カ所あることを発見。
また、これを塩基配列の置換パターンに着目し、明らかに異なるゲノム異常を示した2例を除き25例の腫瘍の全ゲノムを比較したところ、肝炎ウイルスや飲酒の習慣など、がんの原因となるものの影響を受けていることが分かりました。
さらに、27症例中16例において、10個のクロマチン制御に関わる遺伝子変異が1つ以上起きていることが分かりました。細胞株実験の結果、これらの遺伝子は腫瘍抑制機能を有していることも判明しています。
また、B型肝炎ウイルスは、そのゲノムが肝細胞のゲノムに入りこみ、発がんさせると考えられてきていますが、今回の11例のB型肝炎関連の肝臓がんを解析したところ、4例でTERT遺伝子周辺に、B型肝炎ウイルスのゲノム配列が挿入されていることが分かり、このことが、B型肝炎関連の肝臓がんの原因の1つである可能性が出てきました。
今回の解析により、クロマチン制御機構の異常が約6割の肝臓がんで認められたことから
と、研究グループはコメントをしています。
今回の解析データは、ICGCのホームページで公開されており、さらに、科学雑誌『Nature Genetics』の掲載に先立ち、オンライン版(2012年5月27日付け:日本時間5月28日)に掲載されているそうです。
▼外部リンク