日本製薬工業協会(製薬協)は、アジアの創薬力向上を目的に、アジア製薬団体連携会議(APAC)創薬連携ワーキンググループと連携し、今年秋に「天然物創薬コンソーシアム」をタイで立ち上げる。日本・タイ・台湾・マレーシアが参加し、各国の大学・研究機関の天然物ライブラリーをタイの天然物スクリーニングセンターに集約させ、そこに日本の製薬協加盟社もアクセスできる枠組みを目指す。上野裕明委員長(田辺三菱製薬常務・創薬本部長)は26日、都内で会見し、「アジアが有する天然物ライブラリーをいかに創薬につなげるかという共同研究の促進につなげる」と語った。
国内では、多くの企業が天然物を活用した創薬を実施していたが、経営的な判断から撤退する企業も相次いでおり、海外との協業を模索する企業も見られたが、日本も批准している国際条約である「生物多様性条約」を遵守しなければいけない等の課題があった。
製薬協研究開発委員会では、「製薬協産業ビジョン2025」の実現に向け立ち上げた五つのタスクフォース(TF)の一つ「天然物創薬の推進」を実施しており、APACと連携し、製薬協加盟社が合意できる国際条約に基づいたガイドラインを策定した。昨年にはアジア連携による天然物創薬がどのようなメリットがあるかを評価するパイロット調査をタイで実施し、カビから5種類の活性化合物を見出す等の具体的な成果を出している。
コンソーシアムでは、アジア各国が保有する豊富な天然物を活用し、アジア発創薬の実現のための共創メカニズムを構築すると同時に、製薬協加盟社が天然物スクリーニングセンターでアッセイを行い、得られたデータを自社の創薬研究にフィードバックできる枠組みも構築していきたい考えだ。
一方、二つ目のTF「前向きコホート研究」の一環として、ゲノムコホート研究を手掛ける東北メディカル・メガバンク(ToMMo)と連携し、製薬協内にToMMoの統合データベースの一部を閲覧できる遠隔セキュリティエリアを設置している。現在は26社が登録しており、約100人が既に閲覧している。無料で利用可能だが、閲覧できるのは統計解析されたデータに限られており、生データにアクセスするには、個社でToMMoと共同研究契約を締結する形となる。