日本とブラジルが共同で臨床性能試験を実施
長崎大学とキヤノンメディカルシステムズ株式会社は7月24日、日本医療研究開発機構(AMED)の新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業において、従来法の3分の1以下の時間でジカウイルスのRNAを検出できる検出試薬「Genelyzer KIT」を共同開発し、キヤノンメディカルが6月18日付けで、体外診断用医薬品の製造販売承認を取得したと発表した。
2016年、ブラジルにおけるジカウイルス感染の流行と小頭症との関連性が世界的な脅威となり、世界保健機関(WHO)の国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態宣言が出された。日本政府はジカ熱に関する関係省庁対策会議を設置。ジカウイルスを含む蚊媒介感染症への対策を強化する一環として、ギニア共和国へのエボラ出血熱迅速検査キットの供与で実績のある長崎大学とキヤノンメディカル(当時、東芝メディカル)が、同年6月にAMED研究事業に参画することになり、迅速検査法の開発に着手した。
開発体制は、ブラジルのLaboratory of Immunopathology Keizo Asami(LIKA)と日本の研究班による日伯共同研究の枠組みで、まず長崎大学が同年7~12月に検査法の基本性能試験をLIKAで実施。その後、同年12月にLIKAとキヤノンメディカルが臨床性能試験委託契約を締結し、ブラジルでの臨床性能試験を開始した。
LIKAは、ブラジル国内のネットワークを活用し、延べ600を超える検体を収集。検体保有機関に試薬や測定用機器を自ら持ち込み、試験を実施した。一方、ジカウイルスの潜在化により陽性検体収集が難航したため、急遽、国立感染症研究所からも検体が分与され、長崎大学にて日本での臨床性能試験を実施したという。
国内初のジカウイルスRNA検出用の体外診断用医薬品
Genelyzer KITは、栄研化学株式会社が開発した核酸増幅法である「Loop-Mediated Isothermal Amplification」(LAMP法)を測定原理としたジカウイルスRNAの検出試薬。キヤノンメディカルとして、初の病原体遺伝子を検出する体外診断用医薬品となる。また、国内初のジカウイルスRNA検出用の体外診断用医薬品でもあり、今後、国内の検疫施設、病院などに配備されることを目指し、水際での感染症予防対策への貢献が期待される。
長崎大学とキヤノンメディカル、AMEDは今後も、官民一体となって蚊媒介感染症や一類感染症などの新興・再興感染症に関する研究事業、検出試薬の開発と社会実装を進め、世界の感染症対策に貢献していきたいとしている。
▼関連リンク
・キヤノンメディカルシステムズ株式会社 プレスリリース