不十分だったDAA治療後の肝病理組織所見の検討
大阪市立大学は7月23日、C型慢性肝炎に対する経口直接作動型抗ウイルス薬治療後の肝組織の改善を顕微鏡レベルで確認し、その結果について世界で初めて報告したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科肝胆膵病態内科学の榎本大准教授らのグループによるもの。研究結果は「United European Gastroenterology Journal」に掲載された。
画像はリリースより
C型肝炎の治療には長年、インターフェロンが用いられてきたが、副作用が多く、高齢者への治療が困難で、ウイルスの排除率も限定的だった。これに対し、2014年からはインターフェロンを使わず、直接作用型抗ウイルス剤(DAA)による治療で、ほとんど副作用もなく100%近くの患者のウイルスを排除できるようになってきた。
インターフェロン治療でC型肝炎ウイルスが肝細胞から完全排除された場合、血液検査の結果が改善するだけでなく、肝生検組織で顕微鏡レベルの炎症や線維化が改善し、長期的には肝硬変や肝臓がんへの進展率も抑制され、肝外病変も改善することが示されている。一方、C型慢性肝炎に対するDAA治療後の肝病理組織所見の検討は、これまで十分になされていなかった。
ほとんどの症例で肝組織の改善を確認
今回の研究では、大阪市立大学医学部附属病院でDAA治療によりウイルス排除に成功したC型慢性肝疾患691例のうち、同意が得られた51例に、治療終了後41±20週後に肝生検を実施した。
治療後肝生検の炎症グレード(A0/A1/A2/A3)は18/24/8/1例、線維化ステージ(F0/F1/F2/F3/F4)は3/20/15/9/4例だった。A2以上の有意な炎症が残存していた9例中4例には、5%以上の脂肪化を伴っていた。
また、治療前に肝生検を行った20例では1.2年前(中央値)との比較が可能で、炎症グレードは1.3±0.6→0.7±0.9(改善13/不変6/悪化1例)と有意に改善したが(P=0.0043)、線維化ステージの変化1.8±1.0→1.7±1.3(改善5/不変11/悪化4例)は有意ではなかった(P=0.45)。鉄沈着グレードは1.2±1.2→0.5±0.5(改善11/不変7/悪化2例)と有意に改善したが(P=0.0093)、脂肪化スコアの変化0.4±0.5→0.5±0.6(改善1/不変14/悪化5例)は有意ではなかったという(P=0.10)。
今回の研究により、DAAによる治療を行ったほとんどの症例で肝組織の改善が見られた。研究グループは「血液検査のみならず肝生検結果の改善も見られたことから、治療によって将来的には肝硬変や肝臓がんへの進展が予防できることが期待される」と述べている。
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・大阪市立大 プレスリリース