望まれている「骨を再生させる治療薬」の開発
熊本大学は7月20日、老化やストレス応答に関わるサーチュインのひとつ「SIRT7」が、骨形成に重要な役割を果たすことを発見するとともに、骨形成に必須の遺伝子の働きを活性化する新しいメカニズムを解明することに成功したと発表した。この研究は、同大大学院生命科学研究部の吉澤達也准教授、山縣和也教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英Nature系科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
骨粗しょう症は、老化などによる骨量減少のために骨折が起こりやすくなる疾患。要支援・要介護となるリスクが高くなるため、その対策は超高齢社会における重要な課題だ。骨粗しょう症の治療では、骨吸収を抑える薬剤に比べて骨形成を促進させる薬剤は限られており、骨を再生させる治療薬の開発が望まれている。
サーチュインは、標的タンパク質中のリジン残基に結合したアシル化修飾を取り除く酵素で、老化やストレス応答、さまざまな代謝などの制御に重要な役割を果たしている。哺乳類ではSIRT1~SIRT7の7種類が存在。SIRT7は、がんや脂質代謝に関与することが報告されているが、骨組織における役割や骨老化との関わりは不明だった。
SIRT7によるSP7/Osterix調節経路が新たな治療標的に
今回研究グループは、SIRT7酵素が無いマウスでは骨形成が低下し、骨粗しょう症様の病態を示すことを見出した。また、骨組織におけるSIRT7の遺伝子発現は、加齢により減少することを突き止めた。さらに、骨芽細胞の形成(分化)に必須な遺伝子の働きを調節する因子SP7/Osterixの活性化には、脱アシル化酵素としてのSIRT7が重要であるという新たなメカニズムを発見。老化した場合など、SIRT7が十分に働かない状況では、SP7/Osterixの転写活性が低いために骨芽細胞が骨を作ることが損なわれ、骨形成低下に伴う骨粗しょう症が引き起こされると考えられるという。
これらの研究成果について、研究グループは「SIRT7によるSP7/Osterixの調節経路が、骨形成低下に伴う骨粗しょう症の新たな治療薬開発のための標的となることが期待される」と述べている。
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