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3Dプリンティング技術で作られた入れ歯を実用化-産総研

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2018年07月23日 PM01:15

3Dプリンティング用コバルトクロム合金粉末の承認を取得

産業技術総合研究所は7月19日、3Dプリンティング用コバルトクロム合金粉末の薬事承認を取得し、患者に最適な人工歯を用いた歯科治療を可能にしたと発表した。この研究は、産総研健康工学研究部門生体材料研究グループの岡崎義光上級主任研究員が、株式会社アイディエスと共同で行ったもの。


画像はリリースより

口腔内環境の改善は、健康の維持や疾病の改善に効果的であるが、40才以上に一人当たりの平均喪失歯数が急増。単一および複数の人工歯(クラウン・ブリッジ)を用いた治療に加え、部分義歯(部分入れ歯)および総義歯(総入れ歯)など、複雑な立体構造を有する人工歯の使用割合が急増する。また、繰り返し噛むことによる人工歯の破損も増加している。さらに、口腔内に存在する材料からの口腔内や口腔外でのアレルギー症状も多くみられ、アレルギー反応の少ない単一材料での一体製造が求められている。

人工歯の作製に用いる歯科材料は、医薬品医療機器等法に基づき、通常、第三者認証機関により認証されるが、積層造形した人工歯(補綴修復物)は、製造方法が新技術となるため、認証品目としては取り扱えない。そのため、厚生労働大臣からの認可となり、医薬品医療機器総合機構による審査が必要となり、歯科材料製造販売業者などが薬事製造販売承認申請に消極的な面があったという。

材料の無駄が少なく、製造期間も1/3以下に短縮

今回、産総研は歯科材料製造販売業者であるアイディエスと共同で、三次元積層造形技術を活用した「」の早期実現に向けた3Dプリンティング技術による人工歯の実用化に取り組んだ。臨床使用のためには、歯科材料の医療機器としての承認が必要なため、積層造形用コバルトクロム合金粉末の薬事製造販売承認申請はアイディエスが担当。産総研は、積層造形材のミクロ組織や耐久性などの力学的安全性評価を行ったという。

その結果、三次元積層造形用コバルトクロム()合金粉末は2018年4月27日、厚生労働大臣から国内で初めてクラス2の医療機器として製造販売承認を取得。両者が協力して開発を進めることで、承認申請から厚生労働大臣承認まで1年未満という短期間で承認を得ることができたという。

積層造形技術は、使用するコバルトクロム合金粉末が繰り返し再利用できるため、材料の無駄が少なく環境にもやさしい。さらに、コバルトクロム合金の鍛造加工に比べて低コストの製造技術で、夜間に造形すれば、次の日には仕上げ加工でき、製造期間が1/3以下に短縮できるとしている。

今回開発した技術は、デジタル歯科技術の発展に貢献し、IoT技術と連携することで、遠隔地域でも利用できるようになると期待される。また、歯科技工所の閉鎖、技工士の高齢化に歯止めをかけ、技工所の労働環境の改善や歯科大学などでの教育ツールとして活用することで、歯科デジタル化の普及や歯科技工の魅力向上が期待できる。研究グループは今後、積層造形技術の保険適用を目指し、「新たな材料であるコバルトクロム合金の国産粉末での認可を目指す」と述べている。さらに、敏感なアレルギー患者への配慮のため、チタン材料での人工歯の開発を目指すとしている。

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