日本での独占的開発・販売の実施権を中外製薬に許諾
中外製薬株式会社は7月17日、スイスのF. ホフマン・ラ・ ロシュ社と、ROS1融合遺伝子またはNTRK融合遺伝子が確認されたがんを対象に開発中のROS1/TRK阻害剤entrectinib(開発コード:RG6268)について、導入契約を締結したと発表した。この契約の締結により中外製薬は、entrectinibの日本における独占的開発・販売の実施権を許諾され、その対価として契約一時金およびマイルストンをロシュ社に支払う。
ROS1融合遺伝子は、何らかの原因によりROS1遺伝子とCD74など他の遺伝子とが染色体転座の結果、融合してできる異常な遺伝子。ROS1融合遺伝子から作られるROS1融合キナーゼにより、がん細胞の増殖が促進されると考えられている。ROS1融合遺伝子は、非小細胞肺がん患者の約1~2%に認められ、その中でも腺がんでより多く発現している。
NTRK融合遺伝子とは、NTRK遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3、それぞれTRKA、TRKB、TRKCタンパク質をコードする)と他の遺伝子(ETV6、LMNA、TPM3など)とが染色体転座の結果、融合してできる異常な遺伝子。NTRK融合遺伝子から作られるTRK融合キナーゼにより、がん細胞の増殖が促進されると考えられている。NTRK融合遺伝子の発生は非常に稀だが、成人や小児のさまざまな固形がんや肉腫など(虫垂がん、乳がん、胆管がん、大腸がん、消化管間質腫瘍(GIST)、乳児型線維肉腫、肺がん、唾液腺の乳腺相似分泌がん、悪性黒色腫、膵臓がん、甲状腺がんなど)で確認されている。
ロシュ社が第2相臨床試験「STARTRK-2」を実施中
Entrectinibは、ROS1(c-ros遺伝子1)およびTRK(神経栄養因子受容体)ファミリーを強力かつ選択的に阻害する経口投与可能なチロシンキナーゼ阻害剤。脳転移巣への作用も期待されている。ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん、およびNTRK融合遺伝子陽性の固形がんを対象に開発が進められている。現在、ロシュ社が第2相臨床試験(STARTRK-2)を実施中だ。
なお、同剤はがん種を問わず、NTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対し、2017年5月に米国食品医薬品局(FDA)より画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に、同年10月に欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME(PRIority MEdicines)に指定されている。国内でも、2018年3月に先駆け審査指定制度の対象品目として指定されている。
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・中外製薬株式会社 ニュースリリース