根本的な治療法が確立されていない難治性神経変性疾患
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は6月25日、難治性神経変性疾患のハンチントン病に対して、その脳内で顕著に減少しているマイクロRNAと呼ばれる機能性RNAを補充することで病態が改善することを、ハンチントン病モデル動物を用いて実証したと発表した。この研究は、NCNP神経研究所神経薬理研究部の北條浩彦室長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Molecular Therapy Nucleic Acids」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
ハンチントン病(Huntington’s disease: HD)は、不随意運動、行動異常、認知障害、精神障害などの症状が現れる常染色体優性の遺伝性神経変性疾患。その原因は、4番染色体にあるHuntingtin(HTT)遺伝子の変異にある。現在のところ、HDに対する根本的な治療法は確立されていない。
モデル動物の運動機能が改善、延命も確認
研究グループは今回、HDに対してその脳内で顕著に減少しているマイクロRNAを補充することで病態が改善することを、ハンチントン病モデル動物を用いて実証。とくに顕著な減少を示したmiR-132と呼ばれるマイクロRNAに注目し、miR-132を脳内に補充することで、補充治療を受けたモデル動物の運動機能が改善することを見出した。さらに、miR-132の補充を受けたモデル動物が延命することも確認されたという。
今回の研究により、HD脳内で減少するmiR-132を補充することで、HDの病態が改善することを証明した。さらに、病気の原因となる疾患原因遺伝子やその遺伝子産物にはほとんど影響しないという観察結果は、疾患原因遺伝子やその遺伝子産物を直接ターゲットにした従来の治療戦略とは異なる、別の作用機序に基づく病態の改善であることを示唆している。この研究成果について、研究グループは、「難治性の神経変性疾患に対して従来の治療アプローチとは異なる別のアプローチによる新しい治療の道を拓いたものだ」と述べている。