「成育コホート研究」のデータを解析
国立成育医療研究センターは5月10日、2歳までの抗菌薬の使用と5歳におけるアレルギー疾患の有症率との間には有意な関連があり、抗菌薬を使用した群でアレルギー疾患の発症リスクが高くなると発表した。この研究は、同センターアレルギー科の大矢幸弘医長、山本貴和子医師らのグループによるもの。研究成果は「Annals of Allergy, Asthma and Immunology」に掲載されている。
アレルギーの発症リスクを増やす要因は、性別・アレルギー素因などの個体要因に加えて、妊娠中の母親の喫煙に始まる胎児期から小児期の受動喫煙や大気汚染への曝露などさまざまな因子が関わっているとされている。海外では抗菌薬使用によるアレルギー発症のリスクが上がるとの報告があり、研究グループは、日本の子どもたちでも同様なのかどうか、生後2歳までの抗菌薬使用と5歳時のアレルギー疾患の関連について検討した。
今回の研究では、同センターで出産を予定した一般集団の妊婦(1,701名)や新生児(1,550名)をリクルートした出生コホート研究「成育コホート研究」のデータを使用。2003~2005年に妊娠した母親を登録し、現在もその母親と乳幼児について継続的に追跡調査を行っている。この追跡調査より、妊娠中や小児期のさまざまな曝露や生活様式などが子どもたちにどのように影響を与えるかを調査することが可能となる。
5歳時の気管支喘息、アトピー性皮膚炎罹患と有意な関連
今回の検討においては、2歳時に保護者が回答するアンケート調査にて抗菌薬の使用歴について調査。5歳時にアレルギーがあるかどうかについてもアンケート調査を用いて評価した。回答が得られた902人の2歳までの抗菌薬使用の有無と5歳時のアレルギー疾患の有症率を比較し、抗菌薬の種類別の使用の有無とアレルギー疾患の有症率の比較も実施。アレルギー疾患に影響を与える因子を調整して解析を行った。
画像はリリースより
その結果、2歳までの抗菌薬使用歴と5歳時の気管支喘息の罹患については調整オッズ比1.72、5歳時のアトピー性皮膚炎の罹患の調整オッズ比は1.40、アレルギー性鼻炎の罹患の調整オッズ比は1.65と、統計学的に有意な関連があった。抗菌薬の種類別の検討では、2歳までのセフェム系の抗菌薬使用歴は、5歳時の気管支喘息の罹患の調整オッズ比(1.97)やアレルギー性鼻炎の罹患の調整オッズ比(1.82)と関連があった。また、マクロライド系の使用歴は、5歳時のアトピー性皮膚炎の罹患の調整オッズ比と関連があったという。
今回の研究で示唆された結果は、抗菌薬曝露がアレルギー疾患に関与する機序の解明など、今後の課題も残している。研究グループは、今回の研究結果もあわせ、抗菌薬使用のリスクとベネフィットを考慮して抗菌薬使用を適切に決定することが重要だ、と述べている。
▼関連リンク
・国立成育医療研究センター プレスリリース