注目される睡眠障害と生活習慣病との関係性
京都大学は5月9日、滋賀県長浜市と共同で行った「ながはまコホート」事業において、睡眠呼吸障害、客観的な短時間睡眠、肥満の相互の関連性と、それらが高血圧、糖尿病に与える関連について、性差と閉経前後もふまえた7,000人以上という世界最大規模の調査で横断的に解明したと発表した。この研究は、同大医学研究科の松本健客員研究員(大阪府済生会野江病院医長)、陳和夫特定教授、松田文彦教授らの研究グループによるもの。研究成果は「SLEEP」に掲載されている。
画像はリリースより
睡眠呼吸障害の大部分を占める睡眠時無呼吸は、日中の過度の眠気などで社会生活に重要な影響を与えるばかりでなく、高血圧、糖尿病、心血管障害発生とも関連するため、近年多くの注目を集めている。また、短時間睡眠も24時間社会において増加し、日中の眠気のみならず生活習慣病との関連が注目されつつあるが、これまでの報告のデータは客観的睡眠時間ではなく、自己申告の睡眠時間によるものがほとんどであった。さらに肥満は、生活習慣病の発症予防、健康的な生活を送るための最大の課題で、かつ睡眠時無呼吸の最重要要因でもあり、短時間睡眠との関連も指摘されている。
睡眠呼吸障害は男女とも高血圧に関連、糖尿病は女性のみ
研究の結果、睡眠時無呼吸は肥満ばかりでなく、睡眠日誌と加速度計で測定した客観的な短時間睡眠と関連することがわかった。また、睡眠呼吸障害は男女とも高血圧に関連しており、その重症度が高くなるにつれて関連度が高くなった。糖尿病に関しては、女性においてのみ関連しており、特に、閉経前の女性においては、中等症以上の睡眠呼吸障害があると糖尿病は28倍と、著明に多くなった。なお、肥満は男女ともに高血圧、糖尿病と関連していたが、客観的に測定した短時間睡眠は高血圧、糖尿病いずれにも関連が認められなかった。さらに、高血圧や糖尿病に対する肥満の関与は、睡眠呼吸障害により約20%間接的に媒介されており、性差が認められた。
横断研究ではあるが、世界最大規模の参加者で、客観的な睡眠時間と睡眠呼吸障害、肥満の相互関連を調べた同研究から、短時間睡眠でなく、肥満と睡眠呼吸障害が高血圧、糖尿病と関連があり、しかもその関連の度合いに性差、閉経前後で相違がみられることが明らかとなった。研究グループは、現在第3期のながはまコホート事業として、今回の研究の対象者の5年後の睡眠時間や睡眠呼吸障害の程度、高血圧や糖尿病の状態などを調査中。このデータを用いて、睡眠時間や睡眠呼吸障害の本当の程度、あるいはそれらの変化が高血圧や糖尿病にもたらす影響を縦断的に解析し、因果関係について検討する予定としている。
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・京都大学 研究成果