TRIFが異常化したグリア細胞を除去
名古屋大学は4月6日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)において、自然免疫分子TRIFが、異常化したグリア細胞を取り除き、神経保護機能を持つことを発見したと発表した。この研究は、同大環境医学研究所医学系研究科の小峯起助教、山中宏二教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Cell Death & Differentiation」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
ALSは、大脳や脊髄の運動神経が死に至る原因不明の神経難病。ALSモデルマウスを用いた研究により、運動神経細胞の異常以外に、その周囲で神経をサポートするグリア細胞の異常や、病巣に侵入した免疫細胞も病態に関与することが知られている。免疫反応は、先天性の自然免疫反応と、リンパ球が関与する後天性の獲得免疫反応の2つに大別されるが、自然免疫反応のALS病態への関与はよくわかっていない。
TRIF欠損ALSマウスでは生存期間が著しく短縮
研究グループは、自然免疫反応の役割を明らかにするため、自然免疫反応のセンサーであるToll様受容体の機能の鍵となる分子の、MyD88とTRIFを欠損したALSマウスを作成し、解析。その結果、TRIFを欠損した場合にのみALSマウスの生存期間が著しく短縮し、グリア細胞の一種であるアストロサイトが異常化して病巣に蓄積したという。TRIFが正常な場合、自己細胞死(アポトーシス)により異常アストロサイトが除去されたが、TRIF欠損ではその除去が不十分で、運動神経周囲の環境を悪化させ、ALSの病態を悪化させることが明らかになったとしている。
これらの結果から、ALSの病巣では、本来神経をサポートする働きを持つアストロサイトが異常化し、運動神経に有害な変化を起こすことが明らかとなった。また、自然免疫分子TRIFの活性化は、運動神経にとって有害となった異常なアストロサイトのアポトーシスを促すことで、神経保護機能を果たしていることが示唆されたとしている。今回の研究成果により、自然免疫分子TRIFの機能を活性化することで異常アストロサイトを取り除く新たな治療法の開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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