腎臓で産生される酵素「レニン」に注目
筑波大学は3月15日、血圧制御で重要な働きをするレニンの遺伝子について、その活性化に関わる転写制御メカニズムの一端を明らかにしたと発表した。この研究は、同大生命環境系の谷本啓司教授、日本学術振興会特別研究員の牛木亜季らの研究グループによるもの。研究成果は、「Molecular and Cellular Biology」に掲載されている。
画像はリリースより
研究グループは、血圧調節の仕組みとして、腎臓で産生される酵素のレニンに注目してきた。血圧調節に関わる生体システムのレニン-アンジオテンシン系では、2段階の酵素反応によって、昇圧物質・アンジオテンシンIIが作られる。レニンは、この反応系の第一段階(律速段階)で働き、その活性化によって血圧の上昇を引き起こし、その活性は、血圧の変動によるフィードバック制御を受け、高血圧環境下では転写が抑制される。しかし、レニン遺伝子がどのように血圧の変化を感知して、転写が制御されるのか、そのメカニズムは明らかになっていなかった。
遺伝子の一部欠で、高血圧環境下でも発現低下せず
今回の研究では、ゲノム編集技術を用いて、複数の遺伝子改変マウスを作成し、高血圧応答性転写抑制領域を探索。その結果、マウス・レニン遺伝子の一部(上流、約5kbの位置に存在する配列)を欠失させると、高血圧環境下であっても、レニン遺伝子の発現が低下しなくなったという。
さらに、レニン産生細胞株(As4.1)を用いた詳細な解析の結果、同配列はエンハンサーに特徴的なヒストン修飾(ヒストンH3リジン27番のアセチル化)やDNaseI 高感受性部位を伴っており、エンハンサー活性を持つことが判明。また、同エンハンサー活性は、アンジオテンシンIIシグナルにより抑制されることが示唆された。
以上の結果から研究グループは、今回同定した高血圧応答性配列は、正常血圧下では、エンハンサーとしてレニン遺伝子の基本転写活性に寄与し、高血圧状態では、そのエンハンサー活性がアンジオテンシンIIシグナルを介して、フィードバック抑制を受けることで、レニン遺伝子の転写量が減弱するというモデルを提唱。「高血圧発症メカニズムの理解や、高血圧薬開発において、有益な知見となる」と述べている。
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・筑波大学 プレスリリース