糖尿病以外への有用性が注目されるメトホルミン
東京医科歯科大学は3月9日、糖尿病治療薬であるメトホルミンが、腎臓で塩分再吸収を行うナトリウム-クロライド共輸送体のリン酸化を低下させて塩分排泄を増加させることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野の蘇原映誠准教授、橋本博子大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Metabolism」オンライン版で掲載されている。
画像はリリースより
近年、古くから糖尿病治療薬として使われているメトホルミンが、血糖降下作用効果の他にも抗老化や抗がん作用などさまざまな効果があることが明らかにされており、糖尿病以外の疾患への有用性が注目されてきている。
最近のメタアナリシス研究では、メトホルミンが糖尿病でない患者に対して、血圧を低下させる効果があると報告されていたが、腎臓におけるメトホルミンの血圧調節作用やその機序は不明だったという。
メトホルミンがNCCのリン酸化を直接的に抑制
研究グループは、メトホルミンの投与によって、マウスの尿中への塩分排泄量が増加することを解明。次に、腎臓の塩分輸送体について検討を行い、腎臓の遠位尿細管にあるナトリウム-クロライド共輸送体(NCC)のリン酸化が低下しており、NCCの活性化が低下するために尿中への塩分排泄が増加していることがわかったという。
また、メトホルミンによるNCCのリン酸化の低下が、ホルモンや神経など全身性の調節を介したものであることを除外するため、単離した腎臓による検討を実施。その結果、マウスでの実験と同様にNCCのリン酸化の低下を認め、メトホルミンがNCCのリン酸化を直接的に抑制することが示唆されたという。
今回の研究で、メトホルミンによる降圧作用の機序のひとつが示された。研究グループは、「近年、過食によって増加する、高血圧を有したメタボリック症候群症例などへのメトホルミンのさらなる活用が期待される」と述べている。
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