膀胱収縮を抑える皮膚の感覚神経の働きを検討
東京都健康長寿医療センターは3月8日、特定タイプの皮膚神経活動が加齢により低下することで、膀胱の収縮が抑制されにくくなることを発見したと発表した。この研究は、同研究所の堀田晴美研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は「Frontiers in Neuroscience」に掲載されている。
年をとるにつれて、頻尿や尿失禁の原因となる過活動膀胱になりやすくなるが、高齢者はなぜ過活動膀胱になりやすいのか、その原因はわかっていない。研究グループはこれまで、排尿時におこる膀胱の収縮が、ローラーを用いた皮膚への軽い刺激で抑えられることを見出していた。
軽い皮膚刺激は、身体に日常的に自然に加わっており、普段から膀胱の過活動を抑えている可能性がある。その働きが弱くなれば、過活動膀胱に陥りやすくなるのではないかと考え、研究グループは、老いたラットを用い、膀胱の収縮を抑える皮膚の感覚神経の働きを調べた。
膀胱の排尿収縮を抑える自律神経のしくみは保持
今回の研究では、若いラットと老いたラットに麻酔をし、膀胱を膨らませて排尿時に引き起こされるような膀胱の収縮を誘発。皮膚神経を、電気刺激(0.5ms、0.2-10V、0.1-10Hz)またはエラストマーローラーで活性化した。皮膚神経が電気刺激で活性化された場合には、膀胱の収縮は、若いラットと老いたラットで同じ様に抑えられたが、ローラーで皮膚を刺激した場合には、老いたラットでは膀胱収縮を抑える効果が弱くなっていたという。さらに、ローラー刺激中の皮膚神経の反応を調べたところ、老いたラットでは特定のタイプの皮膚神経(皮膚求心性神経)の反応が著しく低下していることが判明したとしている。
今回の研究成果は、老化しても膀胱の排尿収縮を抑える自律神経のしくみは保たれているにもかかわらず、皮膚の刺激を伝える一部の神経の反応が低下するために、軽い皮膚刺激による抑制効果が弱くなることを示している。研究グループは、「これまで不明であった高齢者の過活動膀胱の病因解明に新たな手がかりを提供するものと期待される」と述べている。
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・東京都健康長寿医療センター プレスリリース