静止画像では正確性に欠ける気胸の診断
関西医科大学は2月20日、胸腔内に針を刺し、内部の気圧をリアルタイムで正確に測定することで、従来は不可能だった気胸患者の負担が少ない治療方針の検討をサポートする新たな診断支援システムを開発したと発表した。この研究は、同大呼吸器外科学講座の金田浩由紀講師らの研究チームによるもの。
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気胸の診断のために行われる検査には、胸部レントゲン撮影やCT検査があり、気胸の虚脱の程度が診断されている。しかし、いずれも静止画像であり、空気漏れが今なお継続しているかどうかを即時的に判断することはできない。そのため、時間をおいてレントゲン撮影を繰り返し、肺の虚脱程度の変化から空気漏れを推測することはできるが、判断までに時間がかかることが問題だった。
また、気胸の初期診療では、胸腔ドレナージが多く行われるが、胸腔ドレナージは通常、入院が必要で、ドレナージチューブが肋間神経を圧迫すると強い痛みが出る。また、寝返りや移動が制限されることもあり、患者の肉体的・精神的苦痛は避けられない。空気漏れが止まっている場合、胸腔ドレナージを行う必要性が低くなるが、空気漏れの状況を知る方法は、胸腔ドレナージを行う以外になく、必要性が乏しいにも関わらず、苦痛を伴う胸腔ドレナージが行われている可能性を否定できなかったという。
胸腔内圧測定と内圧調整を交互または同時に行うことが可能
今回、研究グループは、胸腔ドレナージを行っていない胸腔穿刺のみの状態で、簡便にかつリアルタイムに胸腔内圧を測定することができる「胸腔内圧測定システム」を開発。このシステムは、胸腔内圧の測定と調整を行うもので、胸郭内に向けて胸腔穿刺した留置針に繋げる胸腔内圧測定用の圧力計を中心とした回路で構成される。それぞれの経路を切り替えることで、胸腔内圧の測定と内圧調整を交互、または同時に行うことができるという。
研究チームは、ペットボトルや風船などを使った簡易的な胸郭モデルや動物実験から、胸腔内圧測定システムを使うことによって、診療で予想される胸腔内圧の変化の範囲内で空気圧測定が可能であり、呼吸のパターンを曲線として可視化できることを既に確認している。現在は、ヒトを対象とした前向き臨床研究の登録を行い、胸腔内圧の呼吸性変動にはさまざまなパターンが存在することがわかってきたとしている。
今回開発された胸腔内圧測定システムを用いることで、医療従事者は処置中に気胸の状況をほぼリアルタイムで検討することが可能になった。研究グループは、「このシステムを利用すると、胸部レントゲンやCTなどで行っていたこれまでの診断・治療方針判断に対し、胸腔ドレナージを行わない状態でのリアルタイムで客観的な判断材料を提供することが可能となり、気胸診療への大きな貢献が期待できると考えている」と述べている。
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・関西医科大学 プレスリリース