アジア最大のゲノムワイド関連解析を実施
理化学研究所(理研)は2月19日、日本人の主な失明原因である開放隅角緑内障についてアジア最大のゲノムワイド関連解析を実施し、発症に関わる7か所の感受性遺伝子領域を同定したことを発表した。この研究は、同研究所統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、統計解析研究チームの鎌谷洋一郎チームリーダー、秋山雅人リサーチアソシエイト、志賀由己浩研究生、東北大学医学部眼科学分野の中澤徹教授、西口康二准教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Human Molecular Genetics」に掲載されている。
画像はリリースより
緑内障は、日本人の失明原因の第1位となっている眼疾患。日本人における有病率は5.0%で、その主な病型は開放隅角緑内障だが、開放隅角緑内障患者の遺伝要因の大部分は解明されていなかった。
今回、研究グループは、開放隅角緑内障の発症に関わる遺伝要因を明らかにするため、日本人集団27万人を対象にした世界最大級の疾患バイオバンク「バイオバンク・ジャパン」で収集された日本人の開放隅角緑内障患者3,980名と対照群1万8,815名に対し、ヒトゲノム全体に分布する約600万個の一塩基多型(SNP)のゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施。さらに、開放隅角緑内障と強い関連が認められたSNPについて、独立した2つの日本人集団(患者:3,398名、対照群:1万7,570名)で再現性を検証した。
2型糖尿病や心血管病と遺伝的背景を共有
その結果、新たに7か所の遺伝子領域(FNDC3B、ANKRD55-MAP3K1、LMX1B、LHPP、HMGA2、MEIS2、LOXL1)が開放隅角緑内障の発症に影響することが判明。また、これらの遺伝子領域について、他の人種(患者:8,357名、対照群:3万8,100名)における発症リスクへの影響を検証したところ、2つのSNPがアジア系人種で、4つのSNPがヨーロッパ系人種でも発症に寄与していると考えられたという。さらに、関連が示された遺伝子の特徴を明らかにするためパスウェイ解析を行ったところ、上皮成長因子受容体シグナルに関する遺伝子群が発症に影響している可能性を突き止めたとしている。また、過去に開放隅角緑内障との関与が報告されている7形質について、遺伝学的相関の評価を行った結果、開放隅角緑内障は2型糖尿病や心血管病と遺伝的背景を共有していることが明らかになったという。
今回の研究で解析したGWASの統計量データは、科学技術振興機構(JST)バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)を通じた公開を予定している。研究グループは「今後、世界中の研究者が活用可能となることで、開放隅角緑内障の遺伝要因のさらなる解明に貢献すると期待される」と述べている。
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