ヒトとマウスのメタボ関連肝がんを用いた解析より
東京医科歯科大学は2月16日、ヒトとマウスのメタボ関連肝がんを用いた異種間クラスタリング解析によって、共通して高発現する遺伝子「FABP4」を同定し、メタボ関連肝がんにおける悪性化メカニズムの一端を世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科分子腫瘍医学分野の田中真二教授らの研究グループと、九州大学、名古屋大学らの研究グループによるもの。研究成果は、米病理学雑誌「American Journal of Pathology」オンライン版で発表された。
肝がん発症の危険因子として、肥満・糖尿病・脂質異常症などメタボリック症候群が注目されている。しかし、このようなメタボ関連肝がんの特異的バイオマーカーは明らかにされていなかった。
ヒト肝がんとマウス肝がんの遺伝子発現比較は報告されているが、メタボ関連肝がんに着目した解析は、今回の研究が初めてだという。
メタボ因子合併増により腫瘍内活性化肝星細胞のFABP4発現も増
研究グループは、ヒト肝がん手術検体とマウス肝がんのクラスタリング解析を行い、メタボ関連肝がんで共通して高発現する9つの遺伝子を抽出。肝組織での発現部位を解析した結果、候補遺伝子の中で、FABP4が腫瘍内活性化肝星細胞に特異的に過剰発現していることがわかったという。
画像はリリースより
そこで、FABP4過剰発現肝星細胞を作製し、マイクロアレイを利用して網羅的遺伝子解析を行ったところ、炎症性サイトカインの発現上昇を確認。とくにNFκB経路の活性化とFABP4の発現量が相関することが示唆されたという。また、NFκBの蛍光免疫染色の結果、FABP4過剰発現肝星細胞ではNFκB経路の活性化を示すNFκB核内移行が認められ、FABP4過剰発現肝星細胞がマクロファージを活性化させることが明らかになった。さらに、ヒト肝がん臨床症例を用いた解析では、肥満・糖尿病・脂質異常症などメタボリック因子の合併が増えるほど、腫瘍内活性化肝星細胞におけるFABP4発現も増えることを発見したという。
FABP4の発現上昇は肥満・糖尿病・脂肪肝炎などの発症と関連することが知られており、治療薬の開発も進められており、卵巣がん・乳がんなどのがん種において重要な役割を持つことも報告されている。メタボ関連肝がんの新しいバイオマーカーとして臨床応用され、さらにFABP4を標的とした治療薬開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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